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現場は大混乱!? 『あたらしいみかんのむきかた』イベントに潜入!

mikan01.jpg絵と文を担当したイラストレーター・神谷圭介氏手作りの「むきおくん」。

 今、空前の「みかんむきブーム」が到来している。ちまたでは、みかんをむく喜びに目覚め、とりつかれたようにみかんをむき続ける人が後を立たない、らしい。

 そのきっかけとなったのが、昨年11月に発売された『あたらしいみかんのむきかた』(小学館)という児童書。Twitterやネットなどでじわじわと人気を集め、『めざましテレビ』(フジテレビ系)や朝日新聞ほか、数多くの媒体で紹介され、児童書としては異例の5万部の大ヒットを記録中だ。


 内容は、みかんのむき方のハウツー本で、ペンで線を書き、カッターで切り、1つのみかんの皮から動物を作り出すというもの。ただ単に作り方を載せても面白くないということで、主人公「むきおくん」がみかんの皮をむきながら、人間としても成長していくコメディタッチのストーリーに仕立てられている。

 登場する動物たちは虎や龍など、どれもえらく難易度が高く、本当に子どもたちでもむくことができるのだろうか……。そんな疑問を持っていたところ、渋谷のタワーレコードで、ワークショップを行うという情報をキャッチし、編集担当Kとふたりで乗り込むことに成功した。

 当日、タワーレコード6階の一角に設置された会場を訪れると、マスコミ関係者がズラリ。

 某テレビ局数社に雑誌等のカメラマン数十名が、会場をぐるっと一周埋め尽くしている。お客さんの人数の倍はいるであろう彼らのただならぬ熱気で、会場内には一種独特の空気が漂う。完全に居心地の悪そうなお客さんたちだが、親子連れや30代の夫婦、学生など年齢層はバラバラ。みんな純粋にみかんむきを楽しみに来ているのだろうか? 

mikan10.jpg当日参加者に配られた工作キット。

 みかんむき作家の岡田好弘氏と、絵と文を担当したイラストレーターの神谷圭介氏が登場するやいなや、報道陣がふたりを取り囲み、ものすごい勢いでカメラのシャッターが切られた。ふたりとも面くらいながら、挨拶もそこそこに、岡田氏がさっそく今日のみかんむきのテーマ”しらさぎ”の見本を作るため、みかんの皮をカッターで切り出す。見事な手さばきであっという間に”しらさぎ”を作り上げた。すると、この完成したしらさぎをめぐり、報道陣の仕事魂はますます加熱。岡田氏も神谷氏も、唖然としている。 

mikan02.jpgコントのような光景です。

「今日はお客さんが主役のはずですが、マスコミのみなさんの勢いがすごいですね……」

 そう苦笑いしつつも、報道陣のためにしらさぎを持ち上げ、180度少しずつ向きを変えながら作品を披露してくれた。

 撮影が一段落すると、いよいよお待ちかねの実践工程に入る。

 最初こそ、「みかんの真ん中に赤道のように線を引いて、図のように顔と首を書いてください。コツは顔を大きくしないことです」などど岡田氏によるレクチャーがあったものの、その後はなぜか放置プレイ。会場のお客さんたちはたちまち混乱状態に陥った。編集Kも当日渡された「しらさぎの線の描き方本」を頼りに、不安げにペンでみかんに線を描きつける。

mikan05.jpg線を描きます。

 誰もが戸惑いながら作業に徹している中、何の前ぶれもなく、会場の片隅では神谷氏と劇団員の女性・山口さんによる朗読で『みかんのむきかた』の朗読劇が始まった。

mikan03.jpg立ち見客のためのパフォーマンスだったようです。

「むきおくんが、だいすきなみかんをたべずにじっと見つめています。なにやらしんけんなかおでかんがえています。このままでいいのだろうか? だいすきなみかんをただむくだけでいいのだろうか? もっとすてきなむきかたはないものだろうかと……」

 その淡々とした口調は、お客さんをさらに混乱の渦へと巻き込む。見事なまでに集中力を妨げ、みんなどんどん、みかんの線の迷子になっていく。

 やっと朗読が終わったかと思えば、続いて、本日のイベントでみかんを提供してくれた、”三ケ日みかん”の生産農家の方々の紹介が始まった。

mikan04.jpgたしかにすごく甘くておいしいみかんでした。

 予想外のパフォーマンスに目を奪われている間に、黙々と作業を続けていた人が線を描き終え、カッターでみかんに切り込みを入れ始めていた。

 「これ、書いた線全部切っていいのかな?」などと隣同士確認しながら、みんなおそるおそる刃を入れていく。だが、編集Kの隣に座る少年は、いまだ線を描いている段階。完全にお手上げ状態で、線がぎっしり描かれたみかんを絶望の表情で見つめている。

mikan06.jpgカッターで切れ目を入れます。
mikan08.jpgむきます。

 そんな少年を一人残し、大多数の人は完成に近づいていた。編集Kも胴体が無残にもちぎれてしまったが、岡田氏に助けてもらい、なんとか完成した。だが、隣の少年は線描きすらフィニッシュしておらず、「むけないよ~!」とさびしそうに叫ぶ声が会場に響いた。やはり、子どもには難しすぎるようだ。

mikan09.jpg出来ました。

 1時間程度のイベントだったが、想像以上に盛りだくさんの内容だったため、「むけた!」という達成感よりも妙な疲労感が残った。

 帰りにもらったマスコミ用のお土産には、イベントで使用した鳩のカッターや、むきおくんシール、三ケ日みかんなどと一緒に一枚のリリース入っていた。

 内容をよく読んで見ると、【収録用のみかんのごあんない】の一文を見つけた。

「みかんをむく場面をスタジオ等で収録したい場合は、みかんに切り込みを入れたものを、食品用のラップフィルムで巻いた状態でお送りすることが可能です。札幌よりクール便での発送となるため、3日前までにご連絡ください。収録時に簡単にむけます」

 なんという気配り! もうみかんを普通にはむけない、かも。
(取材・文・写真=上浦未来)

●おかだ・よしひろ
1965年大阪府生まれ。札幌市在住。大阪芸術大学芸術学部美術学科卒。Estandarte para las naciones聖書学校卒。キリスト協会牧師。日本の伝統文化の折り紙は、1枚の四角い紙をただ折るだけで作品を作り出すことができる。同じような考え方で、みかんの皮をむくだけでも作品ができるのではないか? とひらめいたことから秀逸なみかんの皮アートを次々に生み出している。オフィシャルブログhttp://ameblo.jp/artes/

●かみや・けいすけ
1979年千葉県生まれ。武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科卒。「おとなのおりがみ」「生き物の持ち方大全」(山と渓谷社)などのイラストと文章を手がける。スガタデザイン研究所所属。また、コントユニット「テニスコート」のメンバーとして活動している。<http://tenusugawa.com/>

あたらしいみかんのむきかた

お試しあれ。

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最終更新:2011/02/06 11:15

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