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【元木昌彦の「週刊誌スクープ大賞」第80回】

還暦まであと5年 桑田佳祐の音楽はどこへ向かう?

motoki0221.jpg「週刊ポスト」3月4日号

●第80回(2月15日~2月21日発売号より)

第1位
「完全独占告白 小向美奈子『覚醒剤と妊娠とイラン人』」(「週刊ポスト」3月4日号)

第2位
「今こそ世に問う元大鳴戸親方『怪死』マル秘メモ」(「週刊ポスト」3月4日号)

第3位
「大復帰インタビュー『桑田佳祐』と生きる」(「AERA」2月28日号)


 講談社の社長交代が決まった。夫に早世され、主婦から社長に就任し20余年務めてきた野間佐和子氏が、息子の野間省伸副社長にその座を譲ることになった。

 それに伴って、かなりの役員人事も行われるそうだ。1990年代の半ばに約2,000億円あった売上げが毎年のように減り続け、09年度は1300億円程度まで落ち込んだ。これを銀行員出身の彼が立て直せるのか、OBの一人として、大きな期待と少しの不安が入り交じる。

 社長交代は2月の株主総会ではなく、4月になるそうだ。その理由は、占いか何かでその日がいいと(現社長の意向だと思われるが)決めたと聞いた。会社再建が神頼みだけにならないよう祈りたい。

 さて、昨年7月に食道がんが見つかったが、幸い軽かったため、年末のNHK『紅白歌合戦』で元気な姿を見せた桑田佳祐(55)が、アルバムを発表したこともあるのだろう、引っ張りだこである。

 「BRUTUS」3月1日号は「桑田佳祐」緊急特集を組み、「AERA」も巻頭インタビューしている。

 それによれば、父も姉もがんで亡くしているがん家系で、「自分も可能性がなくはないな」と思っていたそうだ。がんだと知らされたとき、「呪いはしなかったけど、人生って不条理なもんだなあとは思いましたけどね」と、語っている。

 入院中に聞いていたの「ボブ・ディランのテーマ・タイム・ラジオ・アワー」と小唄とジャズだったというのが面白い。

 立川談志師匠も食道がんだったが、最悪の場合、声を失ったり声帯が傷つくことがある。もしそうなれば声を使う人間には致命的だが、幸い無事に手術を終えた。

 術後、完成したアルバム『MUSICMAN』(ビクターエンタテイメント)にこんな歌詞がある。

「暗闇が目の前に迫り来る 生きるは寂しさを知るためか 涙こらえて口笛吹けば 星が瞬く空の下」(「グッバイ・ワルツ」より)

 08年にサザンオールスターズの無期限活動中止を発表した心境をこう述べている。

「だんだん自分も年老いていくわけだし、いま主流の音楽と折り合いをつけるのはちょっと難しいなと思っていたんですね。(中略)周りを意識するほど、、時代とどうしてもすり合わせていこうとする。それで後悔していることもあるんですね。だからもう、年相応じゃないけど、楽になっちゃおうと思った」

 桑田サザンと言えば砂浜と恋とサーフィン。だが、50代半ばになった桑田が紡ぎ出す音楽は、これからどこへ向かうのか。

 湘南の海の男の象徴だった石原裕次郎は、そのイメージを残したまま52歳で亡くなった。同じイメージを持った加山雄三は70歳を過ぎても海の男を歌い続けている。5年後、60を過ぎた桑田は、どんな歌を歌うのだろうか。

 今週の第2位は、数多ある大相撲八百長関連の中で、八百長追及の元祖・「ポスト」の記事にした。記事自体は今から15年ほど前に「ポスト」が書き立て、一部で騒ぎになったが、いまだに不可解な謎の多い「事件」として、私の記憶にも残っている。

 当該の記事は96年2月にスタートした「元大鳴戸親方(元関脇・高鉄山)の告発手記」である。友人である橋本成一郎氏と二人で、詳細な八百長についての証言と、角界の薬物汚染や暴力団との交際など、タブーを洗いざらい暴露したのである。

 今考えれば大変な重大証言だったが、いつも通り相撲協会も記者クラブも無視した。だが、日本外国特派員協会で講演することが決まり、二人は、これで角界浄化ができると喜んでいた矢先、突然二人とも亡くなってしまうのだ。それも同じ病院で、死因も同じ「重症肺炎」だった。

 無念の2人が遺したメモが残っていて、そこにはこう書かれている。

「財団法人を隠れミノにしての脱税、ファンを裏切る八百長、暴力団との交際……。やっていることはデタラメばかり。これで人を殺せばオウム真理教と同じである。(中略)相撲を日本の文化とか国技というのはもってのほか。この世界は騙し合いと私利私欲の世界なのである」

 「文春」がスクープした小向美奈子(25)の覚醒剤疑惑だが、今週は「ポスト」が、マニラで小向のインタビューに成功した。この記事が今週のグランプリ。

 記事とは別にモノクログラビアで、2月10日に小向の友人が撮影した彼女の写真が載っているが、女相撲かと思うほどの膨れ方である。だが、インタビュー記事の彼女は、さほど太っていないように見えるから、ポールダンスとキャベツだけのダイエットが奏功したのだろうか。

 ポスト誌記者は、今年1月4日に小向から電話をもらって、マニラへ行って英語とダンスの勉強をすると聞いていたから、逃亡ありきのフィリピン滞在ではないのではないかと、各メディアの報道に疑義を呈している。

 それはともかく、逮捕された覚醒剤密売グループのイラン人が「小向に複数回、覚醒剤を販売していた」と供述したと伝えられていることに、大筋このように話している。

 イラン人とは、彼女が付き合っていたシャブ中の彼氏からいわれて、その男のところへ覚醒剤を買いにいったことから始まった。

 優しい男で、敬虔なイスラム教徒だから、親しいが小向と男女関係はないし、覚醒剤を買ったこともない。昨年夏前に、そのイラン人から「売人をやめたい」という相談があった。悩んでいる男を見ていて、そばにいずにはいられなかった。だが、親しかったイラン人が、彼女に覚醒剤を販売していたと話しているとすればショックだ。

 そして、このことを「日本に戻ってきちんとありのままをお話しします。出頭します。逃げてるつもりなんてそもそもなかった。私はそもそも逃亡犯なんかじゃない」と、断言している。

 しかし、グラビアを見る限り、太り方が尋常ではない。クスリを抜くためのマニラ行きだったのではないかという疑念は、インタビューを読んでも消えない。

 小向は、10代半ばでグラビア・アイドルとして芸能界に入り、売春まがいの行為まで強要され、精神的に傷つき、シャブ中の男に溺れ、覚醒剤所持で逮捕される。絵に描いたような芸能界転落物語である。

 もちろん本人の精神的な弱さが一番問題だが、彼女のような悲劇は枚挙に暇がない。芸能界という「魔界」に身を沈め、傷つき、どれだけ多くのタレントが消えていったことだろう。

「小向美奈子はバカな女だ」で済ましてはいけない。ジャリタレを食い物にしている悪徳プロダクション、暴力団が背後で操るクスリの密売組織などを徹底的に排除しなければ、小向のような悲劇はなくなりはしない。角界とほぼ同じ構造がここにもあるのだから。
(文=元木昌彦)

motokikinnei.jpg撮影/佃太平

●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。

【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか

〈お知らせ〉ノンフィクション・ライター朝倉喬司さんを偲ぶ会を3月13日(日曜日)、午後5時から一ツ橋の「如水会館」で行います。問い合わせは、03-3261-0781『現代書館』村井まで。 

BRUTUS (ブルータス) 2011年 3/1号

国民みんながファンなわけではない。

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最終更新:2011/02/21 21:00
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