深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.166

祭りの終わりと新ステージの幕開け、3部作完結『サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』

 話を『SR』シリーズに戻そう。2009年に池袋シネマ・ロサで『SR1』が公開され、3年間にわたって邦画界を盛り上げてきた『SR』シリーズ。入江監督の代名詞ともなった『SR』シリーズは今後どうなるのか。一時は全都道府県を走破するプランも浮上していたが、『SR3』のラストシーンを見る限り、シリーズはいったん封印されることになりそうだ。入江監督の熱いスピリットは、分厚い壁の中に収容される。それだけに、エキストラ2,000人を動員した野外フェスでの長い長い長回しシーンは息苦しく、ひりひりと胸がうずく。観る者にも痛みを伴うフィナーレだ。

 『SR3』は、入江監督にとって自身の青春時代のくすぶったネガティブな感情とか、劇中に登場するマイティやイック、トムたちの壊れてしまった夢とかハンパな希望とか、そんな一切合切を燃焼させる“祭り”である。同時に、入江監督がよりメジャーな次のステージに進むための“通過儀礼”でもある。3年間にわたって日本のインディーズシーンを熱くしてきた『SR』という名の祭りの最後の幕が開く。入江監督が『SR』の封印を再び解くことになるのは、何年後になるだろうか。そのときには入江監督は、どのような作風の監督になっているのだろうか。そして、『SR』を追い掛けていた自分たちはどんな風になっているんだろうか。『SR3』で感じた胸のうずきは、多分そのときまで続くはずだ。
(文=長野辰次)

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『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』
監督・脚本・編集/入江悠 出演/奥野瑛太、駒木根隆介、水澤紳吾、斉藤めぐみ、北村昭博、永澤俊矢、ガンビーノ小林、美保純 配給/SPOTTED PRODUCTION 4月14日(土)より渋谷シネクイントほかにて全国順次ロードショー、4月21日(土)より渋谷シネクイントほかにて『SR』シリーズ全作上映 <http://sr-movie.com>
(c)2012「SR3」製作委員会

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