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お笑い芸人を挫折し、映画監督へ

『まだ、人間』東大卒27歳・松本准平が描く“光なき世界への絶望”、そして救済――

 ところが、最年少である松本がトーク冒頭で満員の客席へと言い放った言葉は、「僕が東大出身で、27歳という若さで憧れの映画監督になった松本准平です。僕の監督デビュー作の特報を今から上映します、皆さんも必ず劇場で見て下さい……」

 苦笑いする浦嶋、辻岡の両氏を尻目に明るく自己紹介しつつ、東大卒のメリットを語り、なんとか客席を沸かせたつもりでいた松本だったが、その胸中にある動揺は隠しきれるものではなかった。波乱に満ちたイベントを企画した増田氏は、

「松本君自身、映画監督と名乗ることへの恐れが相当あったはず。でも、残念なことに、彼の作品はフィルム撮影ではなくビデオ映像なので、先達から見れば取るに足らない新参者でしかなく、映画史に関しても不勉強。批評家に対する妄言も、試写に来てくれない苛立ちから来る反動にしか過ぎません。私自身も経験したことなんですが、公開前から映画監督と名乗るなんて、とても恥ずかしいことなんですよ」

 と語ってくれた。

 また、『まだ、人間』の主人公を演じた俳優でもある辻岡氏は、自身の公式ブログにて次のような告白を掲載している。

「25歳のとき海外国際映画祭監督賞受賞した。イマだから言えるけど、その時にはたくさんの自分よりも年上の監督から、ヒドいイジメ、メチャクチャあったな」

 元暴走族リーダーを経て、23歳で映画監督デビューを果たした辻岡氏らしい本音だが、2月29日に開催された『まだ、人間』の宣伝決起集会の席上では、後輩の松本に向け、熱心に映画業界の礼儀作法を説く辻岡氏の姿が誰よりも印象的だった。

 映画監督とは、自己満足を得るツールであるはずがない。ましてや、興行の成功そのものが近代映画史を築いてきた、という認識もないまま、手軽にビデオカメラで撮影し、パソコン上で切り貼りした動画データをデジタル上映可能なホールに持ち込みさえすれば、誰だって“映画監督”と名乗れる時代になってしまった。

 唯一、救いがあるとするならば、たとえ低予算のデジタル動画作品であろうとも優れた作品ならば、批評家からの賞賛を得るためにその事実を宣伝に生かせばいいだけのこと。

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