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“幸せの国”で雪男探し!?『未来国家ブータン』

51MOCEVN6LL._SS400_.jpg『未来国家ブータン』(集英社)

 今、もっとも注目される“世界でいちばん幸せな国”、ブータン。

 国民総幸福量(GNH)という独自の考え方を打ち出し、国民の約97%が「幸せ」と答える。このご時勢、「幸せとはなんぞや……」と頭を悩ます世界中の人々から熱い視線が注がれている国だ。昨年11月には、ブータン国王、王妃が来日し、その美男美女ぶりに加え、幸せそうな姿に、すっかりファンになった人も多いのではないかと思う。

 私の勝手なブータンのイメージは、“な~んにもない山岳地帯に、日本人のような顔をした人々がのんびり暮らしている”という、かなりざっくりしたもの。しかし、『未来国家ブータン』(集英社)を読んでみると、予想もしなかった、何やらものすごく奥深い「正体不明のナゾの国家」であることが見えてくる。

 著者は、辺境作家の高野秀行氏。これまで20年以上にわたり、コンゴの謎の怪獣「モケーレ・ムベンベ」や、ベトナムの猿人「フイハイ」、アフガニスタンの凶獣「ペシャクパラング」など数々の未確認動物を探し回ってきた、その筋(?)では有名な人物だ。 
 
 その高野氏が、今度は雪男を探しにブータンへ出発することになった。

 きっかけは、友人の二村聡氏が聞いた雪男話。二村氏は、野生の植物や菌類といった「生物資源」から新しい医薬品や食品などを作るための研究を行う会社の経営者。意表をついたアイデアと驚きの行動力の持ち主で、ブータンの農業省・国立生物多様性センターとの業務提携を取りつけていた。

 その二村氏によると、同センターのプロジェクト主任が、「わが国に未知の動物はいないが、雪男はいる」と語っていたというのだ。

 政府の高官が雪男の存在を肯定したという事実にすっかり血が騒ぎ、高野氏はブータンへと旅立つ。

 とは言っても、雪男探しだけのために、ブータンへ行った訳ではない。

 公式の任務は二村氏の依頼で、ブータン政府もよく把握していない少数民族の村へ行き、彼らの伝統知識や現地の状況を調べ、今後、「生物資源」の現地調査に適した場所を探し出すこと。

 その中に、個人的興味である“雪男調査”をこっそり(どっさり)入れ込み、雪男を探し回ったのだ。

 現地に到着後、すぐに聞き込み調査を開始した高野氏。まもなく雪男の特徴がわかってきた。けむくじゃらで山奥に住んでいる。巨大だが、大きさは自由に変えられ、ものすごく臭い。山椒と腋臭が入り混じったようなにおい。それに、女バージョンもいるという。

 なんだか笑ってしまうような特徴だが、証言してくれる現地の人々の顔は真剣そのもの。

 そのほかにも、雪男を目撃するのは不吉なことで、運が落ちている状態だと考えられていることや、雪男に間違えられた老人、雪男に連れ去られた公務員の話など、次々と証言者が現れる。

 だが、調査してみると、雪男以外にも、悪魔を崇拝するという「毒人間」と呼ばれる一族や、子どもを食べるといわれる未確認動物「チュレイ」など、ブータンでは“物の怪”の存在を信じる人々がまだまだ多いことがわかってくる。そして、それらを退治するための薬なども存在し、いつの間にやら、公式の任務である調査内容へとつながっていく。

 ブータンは、開発よりも伝統を優先し、外国人観光客はガイドなしでは自由に歩き回ることもできない。その上、多くの土地でまだ電気も水道も通っておらず、高度な教育や医療、福祉の恩恵にあずかれるのは、ごくわずか。

 その一方で、政府の公用語は英語で、学校教育も小学校高学年からはすべて英語。官僚やビジネスマンはほとんど外国の大学で学位を取っている。開発よりも環境を優先し、世界で最もエコロジーが進んでいるという環境立国でもある。 

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