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ほっこりハッピーエンドと思いきや……

ブラックユーモア全開! 人気フィギュア作家が手掛ける絵本『ちゅーとにゃーときー』

51kgRw9aLYL._SS500_.jpg『ちゅーとにゃーときー』(長崎出版)

 日本の昔ばなしには、子どもへの読み聞かせるのをためらってしまうような不条理な物語や、恐怖の物語が無数に存在する。

 有名なところでは、「カチカチ山」。畑を荒らしていたタヌキを捕まえたおじいさんが、おばあさんに「タヌキ汁」にするように伝え、畑仕事へ。しかし、おばあさんはタヌキにだまされ、逆に「ばばぁ汁」となってしまう。さらに、帰宅したおじいさんもだまされ、「ばばぁ汁」を食べてしまい……。

 こんなトラウマ必至の昔ばなしも、かわいい絵なんかが添えられてしまうと、子どもは意外に「なんかおもしろーい」と聞き流してしまうもの。しかし大人になると、「これはヤバイ(笑)」とツッコミながら、グルグルと深読みすることができる。昔ばなしとは、そんな“2度おいしい代物”といえるだろう。

 今年1月に発売となった全編「土佐弁」の絵本『ちゅーとにゃーときー』(長崎出版)も、子どもと大人で印象の異なる作品だ。再話&イラストを手掛けるのは、ポップでちょっとおかしなフィギュアを数多く発表する、人気フィギュアイラストレーター・デハラユキノリ。カラフルな色づかいと強いタッチで、キャラクターや大自然をダイナミックに描いている。

 あらすじは、実に昔ばなしらしい。おばあさんが織った“はた”を、町へ売りに行くおじいさん。そこで助けた猿からお礼に「一文銭」をもらってからというもの、たちまち大金持ちとなり……。

「わしゃ もう かえらないかんき」
「ほいたら おれいに これを もっていって つかぁさい」
おじいさんは きーから いちもんせんを もらいました

 そんな土佐弁の心地よい耳障りは、子どもへの読み聞かせにもぴったり。さらに「おじいさん」「おばあさん」「動物」という、らしいキャストに、分かりやすいストーリー。しかもハッピーエンドと、子どもならきっと「なんかいいお話だった~」「猿がかわいかった~」などと言いながら、本をパタンと閉じることだろう。

 しかし、大人が読むとどうだろうか。それまで想定内のストーリーが展開していたと思いきや、ラスト一歩手前に見過ごせない数ページが……。不意を突かれるように突然訪れるそのシーンには、たった数ページながら、道徳的に子どもへ伝えづらい「取られたら、いかなる手段を使ってでも取り戻せ!」「一度、上を見てしまうと、人は変わってしまう」といった教訓が詰まっているように感じる。

 そんな問題のシーンは、実際に自分の目で確かめてほしい。そしてこの絵本をきっかけに、日本古来のファンタジー作品の数々に目を向けてみてはいかがだろうか。人間と動物がしゃべるだけでも、十分どうかしてるのだから。
(文=林タモツ)

最終更新:2012/04/26 21:00
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