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週刊アニメ時評 第14回

「まるで90年代の夕方6時枠アニメ!?」『モーレツ宇宙海賊』の大器晩成ぶり

 物語のスタート時点からは想像もつかない展開となっているが、そこに至るまでの心情や成長が丁寧に描かれているため、この展開に違和感は少ない。むしろ茉莉香の成長ぶりに、ここまで作品に付き合ってきた視聴者は感動すら覚えるはずだ。

 冒頭でも「古くさい」という視聴者のコメントもある、と紹介したが、確かに本作はテンポのいい会話劇や、女性キャラが多い作品にありがちな百合描写、カタルシスを得るためのトンデモ展開など、今のアニメならあって然るべき「お約束」は現行の他作品に比べれば少なめ。むしろ骨太なSFドラマや謀略劇。はたまた泥臭い学園ドラマなど、例えるならば「90年代の夕方6時枠」を思わせるちょっぴり懐かしい肌触りの作風となっている。だが、それをもって本作がつまらないと切り捨ててもいいのだろうか?

 軽薄短小が良しとされる今のアニメシーンの中で、ここ最近は『Fate/Zero』『境界線上のホライゾン』『ヨルムンガンド』といった熱く重厚なドラマが展開されるテレビアニメが増えつつあり、好評を博している。またOVA作品の『機動戦士ガンダムUC』もガンダムブランドという強力なバックボーンもさることながら、劇中の歴史を脚本や舞台設定にうまく取り入れることでドラマに奥行きを持たせることに成功し、大ヒットを記録している。

 そう考えると、じわじわと上がっている『モーレツ宇宙海賊』のソフト売り上げと評価は、見応えある丁寧な作品に対する期待と、ゆるい萌え&日常系アニメは飽きてきたよ、というアニメファンからの無言のメッセージというのは深読みのしすぎだろうか。

 放送開始時点と現在の『モーレツ宇宙海賊』の評価の転換は、アニメファンの求める作品像の変化の兆しなのかもしれない。
(文=龍崎珠樹)

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