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元木昌彦の「週刊誌スクープ大賞」第143回

ジャイアンツ原監督とナベツネ・清武を巡る泥仕合「巨人軍は球界の紳士たれ」の空しさ

 だが、これで一件落着とはいかなかった。

 今度は、Hの兄貴分だった山本が原を脅し始めたのである。

 ここまで読んできて、おやと思う。日記は処分されたようだし、Hというのは交通事故で死んでいるそうだ。なのに山本は日記を返せと球団事務所に執拗に電話をしてきたり、原の自宅へ押しかけて行ったそうだが、何が目的だったのだろう。ただ日記を取り戻したかっただけではあるまい。まだ原から搾り取れると思ったのだろうか。

 球団側はこのとき初めて原に聞き取り調査を行い、ことの経緯を知るのである。

 山本は当座、威嚇するような言葉は吐くが、金銭要求はしなかった。だが、09年12月1日、球団事務所近くの路上でガスボンベとガソリン缶を持って「ここで腹を切ってやる」と叫び、爆発物を起爆する行為を繰り返したため、威力業務妨害の現行犯で逮捕された。

 公判では原の名前はもちろんのこと、原の醜聞や恐喝事件にも一切触れられず、保護観察付きの有罪判決を受けた。

 不可思議な事件だ。巨人軍側は、Kは元暴力団だが20年以上前に足を洗っているし、Hは原に水産会社の名刺を出していたから、原の頭の中には暴力団と関係があるという考えはまったくなかったとしている。

 06年に脅されて金を払ったとき、相手が暴力団という認識がなかったというのは信じられないが、それよりも、文春が書いているように、この恐喝事件は公訴時効の7年をまだ超えていないのに、球団は被害届を出さないというのは不思議である。

 まだ失踪した女がらみで表に出せない何かがあるのではないか、と勘繰りたくもなる。

 原監督の動きは素早かった。文春が発売される前日、以下のコメントを発表したのだ。

<ファンの皆様へ

 1988年ごろ、私はある女性と関係を持ちました。女性とはまもなく連絡をたちましたが、それから約18年後、監督に復帰して1年目の2006年8月、プロ野球と関係ある人物から電話があり、『あなたの女性問題に関する日記がある。公になれば球界は大変なことになる。表に出ないよう私に任せてほしい』と言われました。

 ゆすられていると思い、不安を感じた一方、私を助けてくれるのだとも解釈し、要求された現金を渡しました。悩んで悩んで悩み抜いての苦渋の選択でした。私の個人マネジャーとは『これで終わりにならない時には球団に相談し、警察に届け出よう』と話し合いました。

 その後、動きはありませんでしたが、2009年、別の男から球団に電話があり、「女性問題のことを書いた日記が監督の手に渡ったはずだ。それを返してほしい」ということでした。私は球団にすべてを打ち明けました。妻にもすぐに告白しました。一番傷つけてしまうのは妻だと思ったからでした。(中略)

 私個人の不徳の致すところであり、浅はかなことをしたと思っています。たくさんの選手を指導するプロ野球の監督という立場にある人間として、深く反省しています。ファンの皆様、大変申し訳ありませんでした。

読売巨人軍原辰徳>

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