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「3日あったら、殺人を自白させてやる……」冤罪が生まれる裏側に迫る『冤罪と裁判』

enzaisaiban.jpg『冤罪と裁判』(講談社現代新書)

 6月7日、ネパール人男性ゴビンダ・プラサド・マイナリ氏が横浜刑務所から釈放された。1997年に起こった東電OL殺人事件の犯人として無期懲役の判決を受けていたゴビンダ氏。事件発生から15年の月日が経ち、ゴビンダ氏の再審請求審を認定。刑の執行が停止されたため、今回の釈放が決定された。この事件は、ゴビンダ氏が逮捕された当初から冤罪事件ではないかとささやかれていた。

 2010年に再審無罪が確定し大きなニュースとなった「足利事件」や、大阪地検特捜部による証拠改ざんが行われた厚労省局長による「障害者郵便制度悪用事件」など、冤罪が判明した事件は数多い。『冤罪と裁判』(講談社現代新書)は、20年にわたる弁護士活動の中で数多くの冤罪事件を扱ってきた今村核氏が、冤罪が引き起こされる構造的な問題を分析した一冊だ。

 例えば、自白という問題。

 普通、容疑者が自白を行ったといえば、世間的には完全に「クロ」と目される。まさか、やってもいない罪を好んで被る人間などいるわけがないだろう。しかし、現実は違う。一日10時間以上にわたって、刑事が恫喝するように声を荒らげる取り調べの現場。接見禁止となれば、弁護士以外のあらゆる人間と面会することすらできない。痴漢などの軽い罪であれば、容疑を認めればすぐにでも釈放されるが、認めなければ1カ月以上の拘束が続く。そんな状況で、容疑者の頭は混乱してゆく。「もしかしたら記憶がないだけで、自分がやったのかもしれない」「認めたほうが楽になる」……。こうして「私がやりました」と、容疑者はあっけなく“自白”をする。

 これは、特殊な人の話でも、精神的に弱い人の話でもない。ある元刑事はジャーナリストに対して「3日あったら、お前に、殺人を自白させてやるよ。3日目の夜、お前は、やってもいない殺人を、泣きながらオレに自白するよ。右のとおり相違ありません、といって指印を押すよ」と語る。熟練の刑事にかかれば、誰でも例外なく「自白」をしてしまうのだ。

 これを防ぐために取り調べ過程を録音・録画し、可視化する方向で議論が進められているものの、なかなか導入が進まないのが現状だ。

 さらに、警察・検察側の手練手管は、とどまるところを知らない。

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