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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.183

“校内格差社会”に出現した異分子(ゾンビ)たち! 青春のカタルシス『桐島、部活やめるってよ』

 格差社会ではあるがそれなりに平穏な日々が卒業までは続くかと思っていたけれど、彼ら・彼女らはすでに肉体的にも精神的にも成長を遂げていた。いつの間にか“繭”の中での付き合いが息苦しく感じられるようになっていた。桐島がその先鞭を付けただけで、みんな薄々と察していた。もしくは気が付かないふりをしていた。いつまでも続くと思われていた金曜日が終わり、週末があっという間に過ぎると、学校中の“繭”にひび割れが生じ始める。校内革命の始まりである。革命はいつだって社会の最下層から勃発する。それまでクラスのみんなから虐げられてきた映画部が、革命の狼煙を上げる役割を負う。

kirishima03.jpgバトミントン部のかすみ(橋本愛)。おしゃ
れ女子グループに所属して、いつもクールな
存在。実はけっこー映画が好き。

 いつもは気弱な前田だが、部活の顧問の反対を押し切ってゾンビ映画の撮影に取り掛かる。題して『生徒会オブ・ザ・デッド』。ジョージ・A・ロメロ監督の傑作ホラー『ゾンビ』(78)の原題『Down of the Dead』をパクった安直なタイトル。内容もきっと、恥ずかしいくらいに安直だろう。でも、ずっと“繭”の中にエネルギーを溜め込んできた前田たち映画部は、映画という表現手段に自分たちの怒り、苛立ち、不安、恐怖のすべてをブチまける。そして、前田たちの一線を踏み越えた行為がきっかけとなり、桐島がいなくなったことでモヤモヤしていた運動部やら帰宅部やらの感情のダムを決壊させることになる。ロメロ監督の『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』(07)がゾンビたちの出現によって世界が崩壊していく様子をドキュメンタリータッチで描いたように、前田の手にした8ミリカメラも校舎の屋上で、それまでの平穏な高校生活、それぞれのグループを優しく守っていた“繭”がグチャグチャに潰れていく瞬間を記録していく。

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