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風営法によるクラブの摘発、違法ダウンロード刑罰化、脱法レバ刺し……

“規制国家ニッポン”の根っこを見据える『踊ってはいけない国、日本』

 はっきり言って、一冊読んでも「こうすればいい」というクリアな回答はまったく浮かび上がってこない。それぞれの論者が示す指針のベクトルは、それぞれまったく別の方向を向いている。けれど実は、そういう雑多な多様性こそが、「規制でがんじがらめになっていく社会」への対処策を示唆しているともいえる。つまり、江戸アケミの言を借りるなら、「自分の踊り方で踊ればいいんだよ」ということだ。

「いや……そう言われても、別にクラブとか行かないし。クラブなんてなくなっても、踊れなくても、別に何も困らないです」

 それでも、クラブカルチャーに興味がない人の中には、そんなふうに思う人も多いだろう。逆に、生計がかかっているクラブ関係者の中には「何も言わずにやり過ごしたほうが賢明だ」と声を上げず黙っている人も多いと、本書にはある。しかし、本書を読む限り、どうやら黙っていることが正解でもなさそうだ。

 前述した通り、クラブだけではなく、社会のさまざまな場所で「排除の論理」は立ち現れている。ルールを増やし厳格化することで「何が起こるかわからない」という不安を打ち消そうとする動きが、あちらこちらで現前化している。それはどういうことか? いろいろな意味で、生活から「遊び」が奪われていく、ということである。そして、もしそれがつまらないと思うなら、「遊び」を取り戻すためには、既存のルールを読み替え、書き換えるたくさんのアイディアが必要だ。本書には、その種になる多くの考え方が示されている。

「一人一人が考えることが必要です」という結論は、紋切り型の思考停止の文句のようであまり好きじゃないけれど、クラブシーンの規制が象徴する「健全で清潔な社会」への志向がどういうものか、多くの人に考えてほしいと思う。少なくとも「なんだか嫌だな」「でも俺には関係ないな」「まあ、しょうがないな」と思って何もしないでいたら、ある日突然「茶色の朝」を迎えることになるかもしれないわけだから。
(文=柴那典)

最終更新:2012/10/09 11:31
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