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「週刊朝日」ハシシタ騒動はまだ終わっていない!

「橋下徹は部落の鬼っ子」 部落解放同盟委員長に聞く

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「橋下徹は部落の鬼っ子」 部落解放同盟委員長に聞く – Business Journal(12月30日)

「橋下市長に部落出身の誇りはあるのか?」
という言葉が印象的だった。

 部落解放同盟(以下、解放同盟)といえば、被差別部落を中心として、あらゆる差別の撤廃を目指して活動している団体だ。「部落差別」と聞くと、今年の出来事で思い出すのが「週刊朝日」(朝日新聞出版)が10月に掲載した、橋下徹大阪市長の出自に迫った連載「ハシシタ 奴の本性」をめぐる騒動だろう。

 橋下市長が被差別部落出身であることに言及した佐野眞一執筆による同記事は、出自を根拠に人格を否定するという手法が、差別や偏見を助長するものだという激しい批判を浴びた。それを受け、すぐに朝日新聞出版は連載打ち切りを決定し、橋下市長に謝罪。編集長の更迭、社長の辞任など、厳しい社内処分も行った。

 しかし、解放同盟中央本部委員長の組坂繁之委員長は「騒動はいまだ幕引きしていない」と主張する。

「ハシシタ」騒動から見えてくる、さらなる論点とは何なのか? 

 解放同盟が考える、マスコミ、そして橋下市長の問題とは? 

 組坂委員長に聞いた。

ーー「週刊朝日」の記事に関しては、解放同盟としても抗議文を出されていましたが、それに対する反応はあったのでしょうか?

実は、かなり気さくなキャラ
である組坂委員長。

組坂委員長(以下、組坂) 我々には特にありません。朝日新聞出版は重い処分をしたと考えているかもしれませんが、我々にはなにもない。橋下市長に対しては謝罪をしたけれど、それだけで済ませるのではなく、これを教訓として、部落差別をなくすためにどういう取り組みをするのかを我々は知りたいんです。そういう点では、週刊朝日や朝日新聞出版とで学習会をやって、そこで問題点をあらためて明らかにしていきたいと思っています。今のままで終わっては、単に「世間からの風当たりが強いから」とか「橋下市長に取材拒否され続けると困るから」という理由で彼にだけ謝罪にいき、終わりとなってしまう。被差別部落地区として記事中に名前を出された八尾市の市長も抗議文を出していますが、そこにも謝罪にいっていないんです。それに、そもそも謝罪することより大事なことがあります。

 かつて司馬遼太郎先生は『龍馬がゆく』(文藝春秋)で「ちょうりんぼう」という部落に対する差別用語を無自覚に使い、それを解放同盟が糾弾するということがありました。司馬先生はそれを強く反省され、「自分は作家なので、単に反省文を書くだけでなく、作品で表したい」と言い、自身の小説『胡蝶の夢』の中にあるエピソードを入れられた。

 江戸後期の将軍侍医だった松本良順が、部落の頭だった弾左衛門の脈を取るというシーンがあるんです。当時、将軍の脈を取った同じ手で、穢多頭の脈を取るなどということは考えられなかった。それを松本良順は「医術に貴賎なし」と言い切る。司馬先生がこうした作品を通して、自分や社会の差別意識を乗り越えようとしたように、佐野さんや週刊朝日も、そういうかたちで真摯に取り組むべきだと思います。

ーーただ、長期連載が予定されていた中、1回目の記事だけで、佐野さんや週刊朝日が持っている部落問題に対する認識の甘さや偏見は理解できるものなのでしょうか。「連載打ち切りの判断は早すぎた」という声もありました。

組坂 佐野さんの連載の一番の問題は、部落問題の土台を理解していないことだったんです。部落問題と、橋下市長の父親が暴力団員だったことや、従兄弟が金属バット殺人を起こしたことなどを結びつけて、そこには部落出身のDNAが存在するかのような表現を平然とする。被差別部落出身者が差別と迫害と貧困という中で十分な教育を受けられずに、まともな仕事に就けないという状況下で、彼らは反社会的な集団に身を寄せるしかなかったという歴史的事実があるのです。それを戦前からの全国水平社の運動、戦後の部落解放運動を通して、多くの先人がまさに命を掛けて、状況を改善してきた。そんな歴史を無視して、佐野さんの連載では橋下市長のルーツを被差別部落に求めようとしていた。

 では、橋下市長のお父さんが暴力団に入ったことについて、なぜそうなったか、誰がそのように追い込んだのかという被差別部落の歴史性・社会性について深く掘り下げているかといえば、まったくしていない。前提として、差別的な認識があるからです。抗議文には具体的に書きましたが、そうした差別的な認識は、記事中の表現の端々から伝わってきました。例えば、被差別部落の具体的地名まで出して、現在そこに住んでいる人たちはどうなるんだ、と。もし、その土地出身の人間と、自分の子どもが結婚しようとしているという親なら、あの記事を見せますよ。「週刊朝日と佐野眞一という、それなりに名の通った媒体とルポライターが書いている通り、同和地区の連中はこんなに恐ろしいんだぞ」と。彼らが意図していなくても、そういう差別を助長する参考資料として使われる恐れがあります。

 佐野さんや週刊朝日編集部がそういった想像力が働かない中で、あの連載が継続されていたかと思うと、とても恐ろしい。「連載中止の判断は早すぎたのではないか?」という指摘もあるようですが、間違った土台の上で展開していては、何回続けても同じです。即時連載中止は妥当な判断でした。

ーー我々も自戒を込めて考えなければいけませんが、被差別部落問題をしっかり勉強し、そこまで想像力を働かせられるメディア人は多くないと思います。

組坂 今回のような問題が起こると、部落問題自体をマスコミで扱うことがさらにタブー化してしまうという懸念が強まります。しかし、しっかり学んだ上で、部落問題を論じたり、報じたりすることは結構なこと。ところが、それができないマスコミが多いので、我々は彼らに糾弾や学習会を通して、しっかり学んでほしいと厳しく訴えてきた。すると、「解放同盟は怖い」と、まるで圧力団体かのような扱いを受ける(苦笑)。それもあるので、最近は少し柔軟な姿勢をとってきましが、そうした期間が続くと、今回のような記事が出てくる。痛し痒しですが、これはマスコミ自身の問題として、どうあるべきかをもう一度しっかり考えてほしいですね。第三者として週刊朝日を批判するだけなら簡単なんです。同じマスコミとして、当事者意識を持って、自分たちはどうするのかを考えてほしい。私から言えることは、まずは「差別の現実に学ぶ」ことが重要ということです

ーー「現実に学ぶ」とは?

組坂 差別があるという実態を、まずは客観的に知らないといけない。マスコミが集中する東京では「差別なんてもうないですよ」という人が少なからずいます。ただ、そういう先入観で世の中を見れば、差別は目に入ってこないものなんです。

 例えば、長野などにいけば、依然として「差別戒名」や「差別墓石」があります。結婚差別も存在します。つい3年ほど前には、四国で結婚差別を受けた部落出身の青年が自殺をするという事件も起きている。全国に足を運ばなくても、インターネットを見ていれば、いまだ差別が氾濫していることはわかるのに、そもそも差別を見ようとしないから、見えないんです。同和教育などのおかげでずいぶんよくはなってきたが、まだまだ問題があるということをマスコミは積極的に知って、取り上げてほしいですね。

●部落出身者の誇りとは?

ーー一方で解放同盟は、橋下市長の政治手法についても異議ありという姿勢を取られています。少々意外に思えたのですが。

組坂 週刊朝日の記事によって、彼は部落問題における被差別者の代表のようなかたちになりましたが、私は彼の人権意識はおかしいと思っています。独裁的で、憲法改正を簡単に口にする。大阪市長としても、大阪人権博物館(リバティおおさか)や部落解放・人権研究所への補助金を打ち切ると決定した。大阪国際平和センター(ピースおおさか)に対してもそう。人権意識を磨き、差別や戦争をなくすための研究・啓発機関をつぶそうとは、とんでもないこと。こんなことができるということは、彼は本当の意味で部落差別を受けたことがない身分なのでしょうが、そうなれたのは、先人たちの闘いと努力の賜物です。私もそうですが、戦後、民主憲法と民主教育の中で順調に勉強でき、社会的活動ができるようになったのも、水平運動や解放運動があったからです。橋下市長は、自身のルーツが部落にあることに対するアイデンティティを、いまだ持てない状況にあるんでしょうね。だから、水平運動や解放運動も理解していない。

 私もかつてそうでした。部落民であることを知った時には親を恨んだ。こんなところに生まれたくなかった、と。ところが、部落差別の実態を学び、解放運動をする中で、親たちが差別の中で苦しみながら、よくぞ育ててくれたという感謝の気持ちがあふれ出てくるんです。そうなると、自分の使命は、その故郷をよりよい故郷にしていかなければならない、より差別をなくしていくために尽力していかなければならないとなる。それが部落出身者のアイデンティティであり、誇りなんです。本来、いわゆるエリートである橋下市長にはその誇りを持って、部落差別を含む、さまざまな差別をなくした、人権の確立した社会をつくってほしかったのですが、実際には逆の方向にいっています。新自由主義的な考え方のもと、効率重視で人権・同和行政を後退させいます。マイノリティを叩くことで、マジョリティの賛同を得る。これは、日本共産党が「同和迷惑論」を振りまいて、それで票を取ってなんとか党勢拡大しようとしたという戦略と似ています。

ーーそれなのに橋下市長は、過去の選挙などでは、自分は部落出身で弱者の気持ちがわかるという面もアピールしていたともいわれています。彼の二面性は理解できますか?

組坂 パフォーマンスでしょう。私は直接、橋下市長と話したことはありませんが、本当に弱者の気持ちを理解しているなら、先ほど言った部落解放・人権研究所への補助金カットなど考えられません。同研究所は単に部落問題をやっているだけではなく、性差別、障害者差別、在日差別、アイヌ民族差別、ハンセン病・エイズ問題など、幅広くやっている。予算の使われ方に異議を唱えるなら「予算を出す代わりに、この点をしっかりやれよ」と指導したり、「予算はここまでしか出せないから、対応策をしっかり考えろよ」と提案したり、リーダーとしてやりようがあるはずです。それをゼロにするのは、彼の部落問題などに対する考え方が非常に偏っている証拠でしょう。

 橋下市長は部落出身だから弱者の痛みがわかる、だから市政でも国政でも彼を支持すると国民が思ったとしたら、それはかつての小泉政権と似たような結果を招く可能性がある。小泉(純一郎)さんは総理就任早々の2001年、ハンセン病国家賠償請求訴訟判決に対して、控訴を断念し、国として正式に謝罪した。また、ハンセン病患者への補償も進めた。あれで、弱者の味方というイメージが一気に上がった。しかし、実際にやったのは、当時の福田康夫官房長官と坂口力厚生労働大臣、上野公成官房副長官です。福田さんは、地元の群馬県草津にハンセン病患者療養所があり、その中に福田後援会の支部もあったから、早くから正しい認識を持っていた。同じく群馬が地元の上野さんはお父さんが医者で、坂口さんは自身が医者。3人はハンセン病をよく勉強していたし、差別撤廃を信条としていたんです。つまり、小泉さんがこの3人に丸投げしたからこそ、実現したものだったんです。ところが、小泉さんは弱者の痛みがわかる総理だと国民は錯覚した。その支持を背景に小泉さんは「痛みを分かち合おう」などといって、強者がますます力を持つエセ改革をした。

 橋下さんも似たようなところがある。ある意味では、「部落の鬼っ子」みたいな感じでしょうね。ただでさえ、安倍政権は相当右傾化する可能性があるわけですから、橋下市長率いる日本維新の会が、その流れにどういう影響を与えていくのか、私はそれを心配しています。
(構成=編集部、写真=山本宏樹)

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最終更新:2012/12/31 07:00

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