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ap bank fesにも出演 半身不随のボーカリストが綴る夢『終わりのない歌』

9784575304626.jpg『終わりのない歌』(双葉社)

 昨年開催された「ap bank fes’12」では、80年代に活躍したバンド「ROUGE」のボーカリスト奥野敦士が“出演”。Mr.Childrenの桜井和寿率いるBank Bandとともに、「ホワット・ア・ワンダフル・ワールド」を歌い上げた。だが、奥野の姿はその会場にはない。スクリーンに映されたYouTube動画が、奥野の舞台だった。

 2008年9月、屋根から転落し頚髄を損傷。それからは、障害者施設でリハビリの日々を送っている奥野。そこにいるのは、かつて日本武道館を埋め尽くしたロックバンドのフロントマンとしてのきらびやかな姿ではない。介護士に食事を食べさせてもらい、カテーテルで尿を排出する障害者としての彼の姿だ。12月に発売した著書『終わりのない歌』(双葉社)には、そんな彼が送る現在の生活が赤裸々なまでに描かれている。

 1990年に絶頂期のROGUEを解散し、ソロ活動や映画音楽、俳優業などを行ってきた奥野。しかし、音楽業界の仕事に行き詰まっていた彼は、2008年に故郷である群馬に拠点を移した。心機一転、派遣会社に登録しながら、音楽をつくる喜びを味わっていた奥野。健康的な生活とともに、新たな一歩を踏み出そうとしていた矢先の事故だった。工事現場での作業中に、7メートルの高さから落下し、気づけば病院のベッドの上。胸から下が動かない体になっていた。

 本書に綴られたリハビリの日々は過酷そのものだ。

 食事を摂るだけでも体力を使い果たす。少しでもストレッチを欠かすと、腕すらも動かすことができなくなってしまう。胸から下が動かない生活は、健康な人間には想像すらできないほどに苦しいものだろう。しかし、まるで手紙のような文体で、読者に語りかける奥野は明るい。苦しさの中にも常に希望を持ちながら、毎日を過ごしている。

 だがもちろん、彼もその現実を受け入れるまでには葛藤があった。ギターも弾けず、愛犬の散歩にもいけない。日常生活はおろか、顔もかけず、目ヤニすらも自分で取ることはできない。「死にたい」と絶望しても、死ぬためには体を動かさなければならなかった……。

「『俺、死ぬことも出来ないんだな……』
涙が次から次へと溢れて、止まらなかった。
死ねないから、ただ生きている……」

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