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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.221

美しさを求めるあまり“怪物”と化した哀しい女『モンスター』の高岡早紀が見せた女の情念!

monsterz02.jpgずっと目立たないように生きてきた和子だが、
整形手術をきっかけに性格が変わっていく。
自分を笑った同僚を血祭りにする。

 和子が“モンスター”と呼ばれるようになったのは、高校時代に起きた事件がきっかけだった。学校で友達もできず、家族からの愛情を感じることもなく育った和子だが、そんな彼女の心がときめく唯一の存在が高校の同級生・英介だった。実は和子と英介はまだ容姿を気にしない幼少期に一緒に町外れにある灯台まで冒険した思い出があった。夜道を迷子になりながらも英介はずっと和子の手を握ってくれていた。和子はそのときの手の温もりが忘れられない。和子にとって英介は初恋の相手であり、白馬の騎士だった。高校で再会した英介は和子のことをすっかり忘れていたが、他のみんなが外見だけでなく性格も暗い和子を敬遠するのに、彼だけは明るく挨拶を交わしてくれる。やはり自分には英介しかいない。だが、英介は学校中の人気者だ。そこで和子は実家の薬局からメチルアルコールを無断で持ち出し、カラオケパーティーの席上で英介に飲ませようとする。英介の目が潰れればいい。そうすれば、私が一生世話してあげる。幼い頃に灯台まで冒険した2人の淡い初恋物語を美しく完結させることができる。だが和子の企みはあっけなくつまずき、学校中でモンスターと呼ばれるようになった。故郷にいれなくなった和子は実家も追い出され、単身で東京へと向かう。人を愛したがために和子はモンスターと化したのだ。

 上京した和子は名前を変え、ひっそり地道に働いていたが、ふと手にした雑誌に掲載されていた美容整形の広告に目が留まる。整形外科を訪ねた和子は感動に震えた。看護士や担当医たちは明るい笑顔で和子を迎え入れ、とても親切に美容整形の素晴らしさを説明してくれる。初めて人間らしい扱いを受けた。汗水流して働いた貯金は瞬く間に手術代に消える。しかしコンプレックスから解放される喜びには換えられない。度々手術を受けることを職場の同僚は笑ったが、自信を手に入れた和子は同僚をボコボコに締め上げる。長年にわたって溜め込んだ彼女のマイナスエネルギーに敵う相手はいなかった。瞳を大きくした次は鼻梁も高くし、さらにはアゴの骨を削って顔の輪郭ごと変えていく。手術費が足りなくなり、SMクラブのM女を振り出しに、ホテトル、ファッションマッサージ、ソープランドと性風俗の世界を渡り歩くようになる。完璧な美貌を手に入れた和子が最後に受けた手術は、顔に“ゆらぎ”をもたらすことだった。整い過ぎた人工的な顔はすぐに飽きられる。そこで左右がビミョーに異なる“ゆらぎ”を施す。そうすることで、右から見るとセクシーな大人の女性、左から見るとイノセントな童女のように映るのだった。男たちは誰もが彼女に夢中になっていく。

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