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「女子マンガが読みたくて」第1回

ゲイのイケメン弁護士の物語が、非モテのオッサンを泣かせる理由『きのう何食べた?』

41yLiVgGNxL._SS500_.jpg『きのう何食べた? 7』(講談社)

男だって、堂々と女子マンガが読みたい!――そんな内なる思いを秘めたオッサンのために、マンガライター・小林聖がイチオシ作品をご紹介!

 文字どおりの意味で「自慢じゃない」のだけれど、僕はモテない。若い頃ならともかく、32歳になる今まで彼女のひとりもいなかったとなると、たいていの人に「なんで?」と聞かれる。僕からするとなぜもクソもなくて、中学生の頃に彼女がいなかったのと同じ感覚のまま32歳になったというだけだったりする。それが当たり前だった。要するに子どもなのだ。

 だから、彼女がいないことにほとんど深い悩みも抱かず、なんとなくこのままひとりでやっていくんだろうと思っていた。何、ずっとそうだったんだから大したことじゃない。そう思っていた。『きのう何食べた?』(よしながふみ)を読むまでは。

 よしながふみは最近だと映画化、ドラマ化された『大奥』で知られているだろうか。『大奥』は流行病によって男性が激減した鎖国中の日本を舞台にした作品で、特に同性愛的な作品ではないが、よしなが作品の多くはいわゆるBL(=ボーイズ・ラブ。男性同士の恋愛を描く作品)に分類される。

 BLはご存じのとおり、基本的には女性向けジャンルだ。だが、その中にあってよしながふみはちょっと特別な存在といっていい。「BLは読まないけど、よしながふみは読む」という男性読者がたくさんいる。よしなが作品で初めてBLに触れ、そこからBLにハマっていったという人もいる。徹底的に女性のためだったBLというジャンルに、00年代初頭に男性を流入させた大きなきっかけとして、よしながの存在は大きかったといえるだろう。

 そんなよしながが「モーニング」(講談社)で月1連載しているのが、『きのう何食べた?』だ。主人公は40代のゲイカップル。話はなんてこともない。彼らの日常を、彼らの自炊レシピとともに淡々と綴っていくというもの。ドラマチックな物語では決してない。

 だけど、この作品を読んでいると不意に涙が出ることがある。彼らの話は、カラッカラにモテない僕の話でもあるのだ。

 いや、別に僕はゲイではないし、主人公の筧のようにイケメンでもない。むしろ、弁護士でまめまめしい料理好きで、同棲中の恋人もいる完璧超人である筧なんて、僕とは正反対といってもいい。
 
 けど、筧は僕の未来像でもある。ゲイである彼は、恋人がいても、どんなにしっかり者でも、結婚はできないし、子どもをもうけることはない。

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