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『下流の生きざま』発刊記念インタビュー

『北斗の拳』原作者・武論尊が語る自衛隊時代、そして、恩人ちばあきおに伝えられなかった言葉

karyunoikizakma__.jpg7月19日(金)発売の『下流の生きざま』(双葉社)。武論尊流“生きるヒント”が名作キャラクターの名言と共に満載されている。

──理想の人物ラオウではなく、ジャギのようにリアル社会を生きてみろ、というメッセージが『下流の生きざま』には込められているわけですね。

武論尊 そういうことです。実社会には歴然とした差別や格差が存在するわけで、理想だけでは実社会は生きてはいけない。下流でもいいんです。下流の人間なら、上を目指していくしかないんですよ。一生、下流のままの人生じゃつまらないでしょ? 格差社会を嘆いていても何も始まらない。なら、ほんの少しでいいから上を目指してみようよと。ちょっと勝負してみよう、自分の上にいるヤツを引きずり降ろしてみようぜとね。そういう気構えを持つだけでも違ってくるはずですよ。ラオウを目指す必要はまったくない。ジャギで充分。ジャギは実社会で勝ち抜く力を持っていますよ。

──かっこ悪いとか恥ずかしいとか口にしてる場合じゃないと。

武論尊 勝ち抜くためには、そんなことは言ってられないですよ。上に上がるには遮二無二にならないとダメ。自分より強いヤツと闘うときはどうすれば勝てるか必死で考えないと。その気合いがないと、下流からは這い上がれない。勝つためにはどんな手を使ってでもやってやる、そういう覚悟ができるかどうか。でも、そんな姿って、とっても人間らしいとオレは思いますよ。

──何だかジャギのことが愛しく思えてきました(笑)。それにしても武論尊先生の作品は『ドーベルマン刑事』や『サンクチュアリ』など、すっごく男臭い世界ばかりですよね。やっぱり10代の頃を自衛隊で過ごしたことが大きい?

武論尊 自衛隊には7年間いたからね。15歳から22歳までの青春と呼べる時期を軍隊みたいなところで過ごした影響はデカいよ。男の友情とかそんなヤワな言葉で表現できる世界じゃなかった。もっとコアな、同じ釜のメシを食った仲というか刑務所仲間みたいなもんですよ(笑)。そんな世界で、かっこいいと思える先輩もいれば、イヤな上官もいる。信頼できる友達がいれば、ちょっと怪しい同僚もいる。無意識に刷り込まれた人間像が多分、作品の中に投影されているんだろうね。本当にね、ヒドい世界ですよ。上官が黒のことを白と言ったら、違うと思ってても「はい、白です」と答えなきゃいけないんです。人間の弱さとか業だとかが自然と自分の中に沁みてくるんですよ。

■ちばあきお先生からの忘れられないひと言……

──不思議に思っていたんですが、武論尊先生のストーリーテラーとしての資質はどのようにして育まれたんでしょうか?

武論尊 小学生の頃は図書館が好きで通ってました。小難しい小説は読まなかったけど、ジューヌ・ヴェルヌの『地底旅行』や『海底二万里』など空想力を広げてくれるような娯楽小説はよく読んでました。それに町に映画館が一軒だけあって、洋画をよく観ていた。学校では映画館に行くのは禁じられていたんだけど、試験の前日だけは先生が見回りに来ないことを知っていたんで、試験の前日は大人に交じって堂々と映画を観てましたね。でも、いちばん大きいのはオレ自身の性格だろうね。ウソや言い訳を考えるのが抜群にうまかった(笑)。オレ、自分では人を殴ったことないんだけど、番長にうまく取り入って、「オレをイジメると番長が来るぞ」と言い回っていた。コウモリ男とかネズミ男とか呼ばれてましたよ。自衛隊でもそうでした。本宮ひろ志は自衛隊を辞める前日に木刀で性格の悪い先輩を追い掛け回したりしてたけど、オレは目立たないように影でうまく立ち回ってましたね。でもねぇ、オレのことを見破っていた上官もいて、「お前の軍隊は真っ先に全滅する」と言われたことを今でも覚えています(苦笑)。

──武論尊先生がジャギのことを深く愛している理由が分かったような気がします。『下流の生きざま』では、故ちばあきお先生とのエピソードも印象に残りました。ちばあきお先生といえば、野球漫画『キャプテン』『プレイボール』で当時の中高生たちに多大な影響を与えた方でした。

武論尊 素晴らしいスポーツエンターテイメント作品だったよね。オレが原作者として売れる前から、あきおさんにはずっと世話になっていたんです。家が近所で、オレの住んでたマンションにあきおさんの仕事場があって、アシスタントの食事を作る際に1食分多く用意してくれて、いつも食べさせてもらっていたんです。しばらくして、オレは『ドーベルマン刑事』が初めてヒットして、有頂天になっていた。「印税ってこんなに入ってくるもんなんだ」と浮かれて、タクシーで熱海まで行って夜通し遊んで、待たせていたタクシーに乗って帰ってくるなんてことをやってたんですよ。よっぽど、オレの態度を見かねたんでしょう。ある日、あきおさんがオレを呼び出して、「最近のお前、かっこ悪いぞ」と諭してくれたんです。あきおさんに言われるまで、自分ではまったく気が付いてなかった。あきおさんのひと言がなければ、ヒット作を一本出しただけでオレは消えていたかもしれない。

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