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2人の天才F1ドライバーが織り成す、人生ドラマ『ラッシュ プライドと友情』

m0000000732.jpg(C)2013 RUSH FILMS LIMITED/EGOLITOSSELL FILM AND ACTION IMAGE.ALL RIGHTS RESERVED.

 今週紹介する最新映画は、極限の世界で命を賭して闘う男たちを描く、骨太でスリル満点の2作品。主人公らと一緒に体の芯からアツくなれる、この季節にうってつけの娯楽作だ(いずれも公開中)。


 『ラッシュ プライドと友情』は、『ビューティフル・マインド』(01)のロン・ハワード監督が、2人の天才F1ドライバー、ジェームズ・ハントとニキ・ラウダの戦いと絆を描くヒューマンドラマ。大胆な走りが身上で享楽的な人生を満喫するハント(クリス・ヘムズワース)と、メカに精通し緻密なコース攻略を追求するストイックなラウダ(ダニエル・ブリュール)は、F3での初対決以来、互いに対抗心を燃やす。先にF1に移りフェラーリのチームで1975年の世界選手権を制したラウダに対し、ハントは76年、マクラーレンのドライバーとして挑む。シーズン中盤まで快調に首位を走るラウダだったが、悪天候のドイツGPで大事故に遭いひん死の重傷を負う。奇跡的に6週間で復帰したラウダと、わずかなポイント差で迫るハント、2人の優勝争いは最終戦の日本GPに持ち越される。

 ハワード監督作品には『アポロ13』(95)、『フロスト×ニクソン』(08)など、実話に基づく傑作ドラマが多い。本作でも、生き方も走りも好対照なライバル同士、ハントの主張で強行されたレースでラウダが重傷といった具合に、創作以上にドラマチックな2人の関係を印象的に再現してみせた。レース場面には1シーンに30台以上のカメラが駆使され、地面すれすれを時速300キロで疾走するF1ドライバーの世界を疑似体験させてくれる。好敵手2人が織り成す人生のドラマと大迫力のレースシーンが見事に融合した本作、車マニアに限らず広く映画ファンにオススメしたい。

 もう1本の『スノーピアサー』は、『殺人の追憶』(03)、『グエムル 漢江の怪物』(06)で知られる韓国の鬼才ポン・ジュノ監督が、欧米のキャストで描く近未来SFエンタテインメント。2014年、地球温暖化を防止するため、各国の上空で薬品を散布したことで、地球上は逆に寒冷化してしまい氷河期を迎える。それから17年後、わずかな生存者らは「スノーピアサー」と呼ばれる列車の中で暮らし、地上を移動し続けていた。列車の前方で贅沢な生活を送る一握りの上流階級に対し、後方車両の劣悪な環境に押し込められる貧しい人々。最後尾車両で革命の時機を待っていたカーティス(クリス・エバンス)はある日、仲間と決起して前方車両を目指すが……。

 ポン・ジュノ監督にとっては初の英語作品で、原作はフランスのグラフィックノベル。凍てついた地球上のレールを保守の人員もなく十数年も走り続ける列車なんて、鉄ちゃんでなくても設定に疑問を抱きそうだが、劇中で一応の説明はされている。細かいことは気にせず、弾丸列車という閉環境の中でダイナミックに展開する下克上のドラマとアクションを楽しもう。エド・ハリスらハリウッドスターの出演も話題で、とりわけ、本来クールな美女のティルダ・スウィントンが別人と見まがうほどの特殊メイクで悪役を怪演しているのは必見。余談めくが、本作主演のクリス・エバンスはキャプテン・アメリカ役で、またクリス・ヘムズワースはソー役として『アベンジャーズ』(12)で共演しており、マーベルヒーローに扮する若手スター2人が活躍の場を広げている例として、今週取り上げた2作品を見比べるのも一興だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『ラッシュ プライドと友情』作品情報
<http://eiga.com/movie/78315/>

「スノーピアサー」作品情報
<http://eiga.com/movie/78218/>

最終更新:2014/02/08 18:00
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