生きるか、死ぬか――獲って、食べて、登る、究極の山旅ハウツー本『サバイバル登山入門』
#本
『サバイバル登山入門』(デコ)電気やお金、常識、時には社会のルールからも遠く離れ、太陽の角度で時間の流れを読み、風を感じて天気を予想する。食べるものは自分で殺し、食べられるものと食べられないものは舌で味わい分ける。装備に頼らず、食料や燃料を現地調達しながら、登山道には目もくれず、道なき道を旅して歩く―――。それが、登山家・服部文祥氏独自の登山スタイル“サバイバル登山”だ。
『サバイバル登山入門』(デコ)は、そんな“サバイバル登山”のハウツー本である。辞書のような厚みがあるこの本には、1999年からサバイバル登山を始めた服部氏が身につけた独自のノウハウが、これでもかというほど詰め込まれている。中でも注目は、獲る、殺す、解体する、精肉する、料理する、咀嚼して飲み込む、消化するなど、食にまつわるすべてについて書かれた「食べる」の章。
<舌とはうまい、まずいを判断するものではなく、本来は「食べられる/食べられない」を味わいわける器官だといえる。食べられるものはうまい。食べられないものはまずい。舌をそんなシンプルな道具として使いうることは生命体としての喜びである>(本文より)
と服部氏は語り、なんでも食べてみる。キノコや山菜に始まり、カミキリムシの幼虫、マムシ、シマヘビ、アオダイショウ、ヒキガエル、たまたま山で見つけた死んだばかりのモグラ……。発見したら、なんとなくおいしそうと感じるものは少し食べてみて、味や体調を観察、体に異変がなかったらもう少し食べてみる。もちろん、狩りもする。例えば、狩猟でよく標的にするというシカ。出現場所を予測し、撃ち、解体し、食べる。その一連の流れが1から10まで、かなり衝撃的な写真とともに、実にわかりやすく説明されている。
服部氏は“殺しの思想”について、こう語る。
<食べるために生き物を獲るというのは興味深い体験であるが、同時に生き物を殺すというのはけっして気持ちのいいことではない。「生きるために殺す」ということには解消できない矛盾がある。私は日ごろ肉を食べているが、そのための「殺し」はしていない。気の進まない殺しを他人に押しつけて、その代価として金銭を払っているということは、結果として殺しを買っていることにほかならないのではないか。今後やましさを感じることなく、肉を食い続けていくには、自分で大型獣を殺すという経験(=狩猟)が必要ではないかと考えたのである>
撃つたびに、自分もいつか死ぬんだなと覚悟しながら狩りに挑む。もはや、服部氏の登山は、生きるか死ぬかなのだ。
なぜ、そこまで自分を追い込む必要があるのか。私のような凡人には、正直、まったく理解できない。だが、<死のリスクがあるからこそ、生きている実感を得ることもできる。登山者は自分の夢を叶えるために死に近づきつつ、死なないように最大限の努力をしている。登山者はだれよりも「生命」にどん欲なのである>など、過剰ともいえる服部氏の独特の思想に、なぜかどっぷりとハマってしまうのだ。
(文=上浦未来)
●はっとり・ぶんしょう
登山家。作家。山岳雑誌『岳人』編集者。1969年横浜生まれ。94年東京都立大学文学部フランス文学科卒(ワンダーフォーゲル部)。オールラウンドに高いレベルで登山を実践し、96年パキスタンのK2(8,611m)登頂。国内では剱岳八ヶ峰北面、黒部別山東面などに初登攀が数本ある。99年から長期山行に装備と食料を極力持ち込まず、食料を現地調達する「サバイバル登山」を始める。妻と三児と横浜に在住。
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