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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.309

金メダリストの肉体を札束で手に入れた男の狂気! 米スポーツ界の暗部『フォックスキャッチャー』

foxcatcher03.jpgジョン・デュポン(スティーヴ・カレル)は地元警察の有力な支援者だったことから“名誉警官”として銃の携帯を許可されていた。

 実際のジョン・デュポンは世界的な化学メーカー・デュポン社の創業一族の末裔ながら、デュポン社の経営からは隔離され、屋敷の中で孤独な生活を送っていた。結婚歴はあるが、DVが原因で1年足らずで離婚している。20代の頃は水泳と近代五種で五輪代表の座をマジで狙っていた。でも、デュポン家に受け継がれてきた脆弱な肉体では、五輪の代表選手になる夢は叶わなかった。そこで金の力で有力選手やスタッフを集めるのだが、自分の思い通りにならないと「みんな、俺の金が目当てのくせに」と感情を爆発させては、コレクションの銃を乱射した。レスリング協会や地元警察はジョン・デュポンの精神状態がおかしいことを知りながら、気づかないふりを続けた。シュルツ兄弟と同様に、レスリング協会も警察もデュポン家の財産の恩恵に預かっていたからだ。『フォックスキャッチャー』が描いているものはシュルツ兄弟に降り掛かった災難でも、デュポン家に起きた醜聞でもない。金権主義とマッチョ信仰に染まった現代アメリカの悲劇にほかならない。
(文=長野辰次)

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『フォックスキャッチャー』
監督/ベネット・ミラー 脚本/E・マックス・フライ、ダン・ファターマン 出演/スティーヴ・カレル、チャニング・テイタム、マーク・ラファロ シエナ・ミラー PG12 配給/ロングライド 2月14日(土)より新宿ピカデリーほか全国公開 
Photo by Scott Garfield (C)MMXIV FAIR HILL LLC. ALL RIGHTS RESERVED
http://www.foxcatcher-movie.jp

最終更新:2015/02/12 18:00
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