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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.382

日本を壊滅寸前に追い詰めた“透明な怪獣”とは? 多角的視点で描いた実録パニック映画『太陽の蓋』

taiyounofuta01福島第一原発に関する情報が官邸にまるで入ってこないため、菅総理(三田村邦彦)のイライラがどんどん募っていく。

 映画史上もっとも臨場感に溢れた、おぞましい“怪獣映画”が日本で公開される。ハリウッド超大作を遥かに凌ぐ、迫真のディザースタームービーだと言っていい。インディペンデント映画『太陽の蓋』こそ、史上最悪にして最凶の怪獣映画だ。この映画に登場する怪獣とは目に見えない放射能であり、それまで安全神話に守られてきた見えない怪獣によって、日本が壊滅寸前にまで追い込まれた3.11の恐怖をまざまざと再現している。

 2011年3月11日、マグニチュード9.0という大地震に東日本が見舞われる。だが、それは単なる予兆にしか過ぎなかった。続いて、それまで見たことのなかった黒い巨大な大津波が太平洋沿岸一帯に襲い掛かり、街や人を呑み込んでいく。さらに大地震&大津波という大自然の脅威は、福島第一原発のすべての電力システムを破壊。これにより冷却機能を失った福島第一原発の炉心は、想定外の暴走を始める。人類の英知が生み出した最新科学の結晶だったはずの原発は、大量の放射能を撒き散らす邪悪なモンスターへと変貌していく。

 超ヘビーなノンフィクション本『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の500日』(門田隆将著、PHP研究所)では被災時の福島第一原発所長・吉田昌郎の視点から、テレビ中継ではうかがい知ることができなかった事故現場の内状が生々しく語られた。まさにイチエフで地獄の扉は開きつつあったのだ。一方、『原発危機 官邸からの証言』(福山哲郎著、ちくま新書)をベースにした映画『太陽の蓋』では東京の総理官邸の地下にある危機管理センターを中心に、同じく官邸内にある記者クラブ、東京で暮らす一般家庭、そして福島第一原発近くにある地元育ちの所員の自宅、と複数の視点から多角的に福島第一原発事故を描き、当時の日本がどれだけパニック状態に陥っていたかを冷静に振り返っている。

 実在の政治家たちが登場する『太陽の蓋』の主舞台となるのは総理官邸だ。地下にはこの日のために造営されていた危機管理センターがあったが、福島第一原発事故に関してはまったくと言っていいほど機能しなかった。菅総理(三田村邦彦)、枝野官房長官(菅原大吉)ら閣僚たちが大地震発生を知って官邸に次々と集まるが、気になる福島第一原発がどのような状況なのかという情報はまるで危機管理センターに入ってこない。菅総理は終始イライラしている。原子力安全保安院の院長(島英臣)に「原発はどうなっている?」と尋ねても、「分かりません。私は東大の経済出身です」とトンチンカンな回答しか返ってこない。原子力安全委員会委員長の万城目(岩谷健司)に至っては、「爆発なんかありえない」と言ったその日に1号機が水素爆発を起こす。1号機の屋根が吹き飛ぶ映像を見た万城目は「あちゃー!」と頭を抱える。もっとも重要な判断が求められる総理官邸で、緊張感のない脱力的なやりとりが繰り広げられる。この国は本当に壊滅の一歩手前まで追い込まれていたことが、ひしひしと伝わってくる。


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