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「血縁より、とりあえず環境を選ぶべき」という『はじめまして、愛しています。』の至極まっとうな選択

 ハジメは、泉が実父に犯されてできた子でした。泉もまた、虐待の被害者だったのです。妊娠を知った泉は家を飛び出し、堕胎しようとしてもお金がなくて、仕方なく公園で産んで、捨てようとしても捨てられなくて、それでもどんどん実父に似てくるハジメの存在に耐え切れず、クサリにつないだのでした。

 この作品で繰り返し語られてきたことがあります。

「児童福祉や特別養子縁組の制度は、子どもの幸せのためにあるもの」
「親や大人たちの思惑は一切関係なく、子どもの幸せが最優先されるべきもの」

 この児童福祉の理念を、とことん突き詰めたのがこの最終話でした。

 望まれない命だってある。

 ハジメは、存在するだけで泉というひとりの人間を傷つける。そういう命です。

 そういう命が存在してしまったとき、その子にとっての「奇跡」とはなんだろうか。

 理由もなく、全面的に受け入れてくれる「本当の家族」が現れてくれること。すべての事情を諒解した上で、それでも心の底から、狂おしいほどに「愛しています」と言ってくれる親御さんが出現し、育ててくれること。

 その奇跡の存在が、梅田夫婦でした。信ちゃんと美奈ちゃんが奇跡を起こしたのではなく、ハジメにとって信ちゃんと美奈ちゃんに出会ったことが奇跡だったのです。

 夫婦が頑なに養子を取ると言い続け、実子をつくることを頑なに避け続けたのはなぜか。このドラマの違和感はなんのためにあったのか。

 そういうわけのわからない、気味が悪いほどに理由もなく「ハジメ」を愛する夫婦がいれば、ひとつの望まれない命が幸せになれるからでした。つまりは、ハジメの側から見たファンタジーだったんですね。「こういう人がいたらいいな」「こういう夫婦さえいてくれたら、どんな望まれない命だって生きていけるのにな」という幻想、嘘っぱち、虚像、それを具現化したのが、信ちゃんと美奈ちゃんだったわけです。

 というわけで、ハジメは正式に梅田家に特別養子縁組で引き取られ、泉は戸籍上でもハジメの親ではなくなりました。

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