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週刊誌スクープ大賞

殺人容疑で逮捕! 講談社エリートに何があったのか……マンガ編集は「電通をはるかに凌ぐ長時間労働」

 私は彼のことを知らないが1999年入社だというから、私が週刊現代を離れ、インターネット・マガジン・Web現代を立ち上げた頃である。

 75年大阪府生まれ。一浪して京大法学部に入り、文春によれば、当初、弁護士を志していたが、父親が経営する喫茶店でマンガに接し、マンガ編集者になりたいと思うようになり講談社を受け入社したそうだ。

 京大法学部からマンガ編集者というと驚く向きもあるかもしれないが、私と一緒に仕事をした後輩は、東大法学部からマンガ雑誌をやりたくて講談社に入ってきた。今はマンガ雑誌ではない某誌の編集長をしているが、彼にマンガを語らせたら、熱く語って止まらなくなる。

 近年、彼らのように有名大学を出てマンガ編集者をやりたいという人間が増えてきている。一方で週刊現代やフライデーをやりたいという学生はとんといなくなった。

 彼は韓国籍で韓国の苗字にこだわっていたそうだ。私が入った70年代には韓国名や中国名を名乗る社員はいなかったように思う。そうだとしてもその頃は日本名を名乗っていたようである。

 私の記憶では80年代以降からではないか、朴や劉と堂々と名乗る人たちが入ってきたのは。新入社員は各部署を回って挨拶することになっているが、眩しい思いで彼らの名札を見た覚えがある。

 彼は、入社したときの社内報に「わたしたわしわたしたわ」という回文タイトルをつけた文章を寄せているが、これは読んだ記憶がある。

 配属されたのは「週刊少年マガジン」編集部で、昨年、「モーニング」に異動するまでそこにいて、数々のヒットマンガを生み出してきた。昨年アニメ映画が大ヒットした『聲の形』、累積2,000万部を超える『七つの大罪』、ヤンキーマンガの最高峰『GTO』などにも関わっていたようだが、中でも「別冊少年マガジン」編集長として関わった『進撃の巨人』は、現在、累計6,000万部を超えるというからすごい。

 それも諫山創という新人マンガ家を起用し、彼は「絶望を描いてほしい」と伝えたという。今思うと意味深な言葉である。

 これ1冊手がけただけでも「将来の役員候補」間違いないと思われるかもしれないが(そう報じたメディアは多い)、残念ながら講談社という会社は、ベストセラーを出した編集者は不思議と出世しないのだ。『窓ぎわのトットちゃん』を出した女性編集者は、定年間際に校閲へ異動になった。乙武洋匡の『五体不満足』を手がけた編集者も大出世はしていない。百田尚樹の『海賊とよばれた男』を出した編集者も局長まで行かず、先日定年を迎えた。

 講談社にマンガ出身の役員はいるが、多くは営業や販売出身で、オーナー会社だからトップにはなれないが、ナンバー2は、この中から選ばれることが多い。編集上がりをあまり重用しない不思議な会社である。

 ベストセラーを出すと廊下をふんぞり返って歩くようになる編集者がいるが、朴容疑者はそうではなかったようだ。「後輩のちょっとした悩みも邪険にしませんし、若手編集者の目標です」(講談社関係者=文春)。人格的にも優れていたようだ。

 奥さんと知り合ったのは10年以上前で、同期が開いた合コン出会ったという。結婚して2人は社宅に住み2011年に今の千駄木に一戸建てを建てたというから、私生活も順調だったようだ。

 07年に長女が生まれると次々に4人の子宝に恵まれている。彼は次女が誕生の後、ツイッターで「僕は3回しかエッチをしていません」と呟いたそうだが、近所の人によると夫婦仲もよく、声を荒げることもなかったという。

 次女誕生後に、講談社の男性社員としては初めて約2カ月の育児休暇を取ったそうだ。彼が朝日新聞で連載していたコラム(12年7月18日付)にこう書いている。

「なぜ今も昔も、現実でも漫画の中でも、子どもは『お母さん』が好きなのか、分かった気がします。そりゃそうだ、あんなに大変なんだもん。子どもたちはじっとそれを見ている。じっとお母さんを愛している」

 これほど妻の苦労を思い、子どもたちを愛している男が、なぜ妻殺しで逮捕されてしまったのか、私なりに考えてみたい。近隣住民の言葉にある「奥さんは育児ノイローゼ気味ではないか」というのがキーワードだろう。

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