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【おたぽる】

現実的な悪どさや人間くささが魅力を放つ── 原点は『ズッコケ三人組』、映画化も話題の『サムライせんせい』黒江S介氏インタビュー

■編集者が歴史を知らなすぎた結果……こんなに面白く

 さて、ここから話は『サムライせんせい』の誕生に至る経緯へと移った。ここで、PCを前に一緒に話を聞いていた、担当編集の稲石春菜氏も参戦。最初は、スポ根マンガを依頼したはずが、なぜ、この作品へと変化したのか……。

稲石春菜氏(以下、稲石) 先生がデビューされた「OPERA」(茜新社)さんで描かれていたのが、お笑い芸人のチームがテーマになった作品でした。そこで、最初は部活ものというか、チーム男子みたいなテイストの作品をお願いしたいと思っていたんです。

──それが、どうなって幕末ものに?

稲石 打ち合わせをしたら幕末がお好きだというので。それで、一度描いてもらったんです。ところが、私は歴史がわからなくて……ちょっとどころか、ほとんどわからなかったんです。何年に黒船が来航したとかも知らなくて。だから、「私でもわかるくらいに簡単に描いて欲しい」とお願いしたら、『サムライせんせい』が届いたんです。

黒江 最初の注文は、その一点だけでしたね。

稲石 いや~、私の頭のレベルに合わせて相当簡単に描いてもらったわけなんです。それで、私がわかるんだから、みんなもわかるだろうと思って出発しました。

黒江 稲石さんが、幕末にすごく詳しかったら、最初のネームのまま通っていて、即打ち切りになっていたと思いますよ。

──初めて単行本がドラマ化されて、映画にもなろうとしていますけど、強運ですよね。

黒江 運がいいなというよりは、やりやすい作品なのかなと。タイムスリップものは鉄板のテーマですけど、現在から過去ではなく過去から現代だと、サムライの衣装を着た人を用意すればセットもいらないじゃないですか。だから、実写化しやすいのかな~と思っています。

稲石 映画化は、維新150周年記念の企画の中で、数多く映像化されている竜馬よりも、あまり映像作品に出て来ない半平太が主人公なのがよいなという意見もあり選んでいただいたそうです。

■子ども相手でも手を抜かない『ズッコケ三人組』が創作の原点

──強運というより、やはり作品力といったところでしょうか。そんな作品をつくる先生ですが、Twitterを拝見したところ『ズッコケ三人組』シリーズが大好きだとか。

黒江 『ズッコケ三人組』シリーズは原点ですね。ああいう風に、仲間が少人数集まって事件を解決するノリがホントに大好きで、かといって、それが組織化されたものではなく、有志が好き好きにあつまるノリが好きなんですよね。

──それぞれの作品で、冒頭に情景を描きつつ、なんとなく3人が登場しますからね。

黒江 そうなんですよ。しかも、児童書なのに内容がシビアで、みんなが馴れ合ってないんですよね。「愛と勇気と希望」みたいなこといわずに。

 私が一番好きなのはハカセなんです。すごく辛辣で「キミは頭が悪いんだから、こういうことには向いていない」なんてことを言ってしまう。ずけずけとした物言いのあけすけな子どもたちの集まりなんですよ。そのノリがすごく現実的で、きれいごとで済まそうとしていないから、好きなんです。

──どの単行本が一番お好きですか?

黒江 えっと、会社を立ち上げるやつ。

──『うわさのズッコケ株式会社』ですか? オススメのポイントはどこでしょうか。

黒江 えっと、ちょっとすみません、あらすじを……(と、書棚から本を取り出す音)。ええと、釣り客相手に弁当を売ったら儲かるぞ、とハチベエが考え付いて、そこから子どもにもわかるように会社とはどうやって立ち上げるのかを丁寧に描いているところですね。

 それに、食に関する記述を読むのも好きなんです。単なるインスタントラーメンを、店で売れる商品にするには、どうすればいいかを試行錯誤する……その丁寧な描写が、すごく印象です。子ども向けだからって適当にはしていないんですよね。

──そういったところに着目されるのが、作品の丁寧な描写に生きているのではないのですか?

黒江 みんなが「ここは飛ばしてよくない?」というところを丁寧に書いたりというのが、好きですね。

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