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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.454

家族に愛された記憶のない人へ捧ぐ至高の処方箋! カルト王の輝く青春『エンドレス・ポエトリー』

少年時代のアレハンドロ(イェレミアス・ハースコヴィッツ)と若き日の自分を励ますアレハンドロ・ホドロフスキー監督。

 チリの首都サンティアゴに、ホドロフスキー一家が引っ越してきたところから本作はスタート。前作『リアリティのダンス』では共産主義に傾倒していた父親(ブロンティス・ホドロフスキー)だが、今はもうお金儲けのことしか考えていない鼻持ちならない商売人だった。音楽を愛する母親(パメラ・フローレス)は父親の言いなりのまま。思春期を迎えたアレハンドロ(イェレミアス・ハースコヴィッツ)は詩人になることを夢見ていたが、父親は「詩人はみんなオカマだ。お前は医者になれ」と息子の将来を一方的に決めつけようとする。高圧的な父親、息子に無関心な母親、ユダヤ系ファミリーの閉鎖的な体質に我慢できなくなったアレハンドロは、親族が集まった本家の庭の木を斧で切り倒すという暴挙に。そのまま両親のもとを飛び出し、若いアーティストたちの溜まり場となっている下宿での新生活を始める。少年時代と決別した青年アレハンドロ(アダン・ホドロフスキー)は、酒場で2リットルのビールジョッキを飲み干す豪快な女詩人ステラ(パメラ・フローレス2役)にひと目惚れし、危険な恋に身を焦がすことになる。

 アレハンドロを迎え入れる下宿先の住人たちが奇人変人ばかりで楽しい。小柄な日本人女性(伊藤郁女)をいつも肩に乗せている合体ダンサー、鍵盤をカナヅチで叩きながら演奏する超絶ピアニスト、全身にペンキを浴びて即興で絵を描くパフォーマンス画家などなど。まるで前衛芸術家版「トキワ荘」のようだ。初めて創作詩を詠むアレハンドロを、下宿仲間たちが大歓迎してくれる。生まれて初めて他者から自分の存在を肯定されたことが、アレハンドロは無性にうれしい。芸術家たちや恋人ステラとの刺激的な体験のひとつひとつが、新しい詩となり、より過激な創作活動へとアレハンドロを掻き立てていく。

 東京国際映画祭の開催中に、ホドロフスキー監督の末の息子であり、青年期のアレハンドロ役で主演したアダン・ホドロフスキーがフランスから来日。父親のことを嫌っていたホドロフスキー監督だが、監督自身はどのような父親だったのだろうか。観客とのティーチインイベントで、息子アダン・ホドロスキーはこう語った。

「フツーの家庭じゃなかったよ(笑)。父は妥協という言葉を知らなかった。子どもの足に合う靴を見つけるまで、靴屋を30軒ほど探し続けたことがある。男の子たちは夕食の前に椅子に立たせられ、1人ずつ詩を朗読させられた。兄弟の中には父に命じられて、裸になってスープの中におしっこをさせられたなんてことも。(日本文化を愛する)父親からは、忍者のように音を立てずに歩く修業をさせられたこともあるよ」

「撮影現場での父は、とにかく人の意見を聞かない。僕の腕を掴み、『こう動くんだ。ここを見ろ』と自分の指示するとおりに動くことを望むんだ。でも僕ができずにいると、3テイク目からは諦めて、『もう勝手にやれ』と僕が演じたいように演じさせてくれたんだ」

 ホドロフスキー監督も自身が嫌っていた父親のように頑固でアクの強い存在らしいが、それでも若き日の自分を演じる息子アダンに対し3テイク目から自由な演技を認めるあたりに、ホドロフスキー監督なりの修正された“家長像”を感じさせる。


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