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『クイズダービー』故・篠沢秀夫教授の“形見分け”テレビマンたちの心を揺るがす「名文」とは

YouTube 朝日新聞社公式チャンネルより

 TBSの人気番組『クイズダービー』で活躍した元学習院大名誉教授の故・篠沢秀夫さんの残した「直筆メッセージ」が、テレビ関係者の間で「名言」として“形見分け”されている。

 2009年に発症したALS(筋萎縮性側索硬化症)で体を自由に動かせなくなった中でも、必死に書いた文章が、取材したテレビ記者らを感動させ、それぞれ額に入れるなどして複数の関係者により丁重に保管されているのだ。

「つらいと思ったら すべてつらくなる。タンがからんでつらくとも、とってもらってサッパリするとうれしい。大切なこと」(原文ママ)

故・篠沢秀夫教授の直筆メッセージ

 紙に書かれた直筆のメッセージは、篠沢さんがALS発症後、テレビ番組の取材を受けたときに筆談で書いたもの。これを取材したテレビディレクターが許可を得て局に持ち帰ったが、感動のあまり、関係者間で「宝物にしよう」と分けられたという。

「日々の放送で残される“使用アイテム”って、通常は放送後にずさんな扱いを受けやすく、ゴミ箱行きも多いんですけど、篠沢さんのは違ったんです」と番組の元スタッフ。

 10月に肺炎で亡くなった篠沢さんは、詩人・ランボーなど、フランス文学に傾倒したパリ留学後、明治大学法学部教授を経て、学習院大のフランス文学科教授になり、定年退職した2004年に名誉教授にもなった。『日本国家論』(文藝春秋)などの名著を持つが、世間的には「篠沢教授」の愛称で親しまれ『クイズダービー』への出演が印象強い。

 番組では、クイズの迷回答が多かったことから、当初は「大学教授にもわからないのか」とも言われたが、「当人は、苦手なものはできなくてもいいということを世間に伝えたい思いがあったそうです」と元スタッフ。11年間の番組出演で「愉快、愉快」と笑う篠沢さんは人気者となったが、その人生は愉快なことばかりではなく、最初の妻を交通事故で亡くし、長男も海で溺死。椎間板ヘルニア、大腸がんでの闘病生活もあり、09年のALS発症で最後まで苦難があった。

 このALSは、全身の筋肉が次第に衰え、呼吸もできなくなっていくという難病。篠沢さんはダイエット中に歯の噛み合わせがおかしいことに気付き、検査したところ筋肉の異変が見つかったが、当初は「誤診だろう」と疑ったという。

 しかし、次第に病の進行が訪れ、10年1月、テレビ取材を受けたときはすでに人工呼吸器を付け、会話ができない状態だった。そのため、わずかに動く腕で筆談となった。

「正直、感動する話を見慣れている取材班でも勇気づけられる経験でした。何しろ教授はずっと明るかったんです。悲観的な話がまったくなくて、ジョークまで言う。こんなに強い人がいるんだと驚かされました」

 執筆活動は闘病中も続いた。パソコンを使う習慣はなかったが、入院中に文書作成だけ覚えて使うようになったという。

「その話をするときも『妻がワープロは重くて持ってきたくないというのでパソコンを覚えた』なんて笑わせていました。本当に“愉快”な方でしたね」(同)

 取材時に書いた篠沢さんのメッセージは「今ある姿を楽しむ古代の心に達しました。かくすことはない」「実務時代にはコツコツと毎日というやりかたはできませんでした。今は毎日同じ仕事を少しずつ」など含蓄あるもので、「まるで格言の色紙のよう」と元スタッフ。

 文字を書くスピードが日々衰える中でも、発症後、5冊もの本を書いた篠沢さん。それらが遺作となったわけだが、直筆メッセージの方も貴重な“遺言”として受け継がれた。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)

最終更新:2017/12/14 13:34
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