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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.503

被災市民への復興支援金200億ドルが闇に消えた!? 国連腐敗構造を暴く『バグダッド・スキャンダル』

実録サスペンス『バグダッド・スキャンダル』。日本ではほとんど報道されなかった、国連で起きた一大汚職事件の真相を暴露している。

 爆弾処理班が体感する恐怖をリアルに再現した『ハートロッカー』(08)や戦場の英雄が帰国後にPTSDに苦しむ姿を描いた『アメリカン・スナイパー』(14)などイラク戦争を題材にした映画が次々と作られている。ベルギー出身のペール・フライ監督による『バグダッド・スキャンダル』もイラクを舞台にした実録サスペンス映画として見応えがあり、戦争を経済的な側面から捉えている点でも興味深い。しかも、イラクの復興支援に努めていた「国際連合」で多額の支援金が闇に消えていたという衝撃的な内容となっている。

 本作が暴く国連史上最悪の不祥事とは、1996年から2003年にわたって行なわれた「石油・食料交換プロジェクト」をめぐって200億ドル(約2兆2,000億円)もの大金の用途先が不明となっている問題。「石油・食料交換プロジェクト」とは、経済制裁に遭っていたサダム・フセイン政権下のイラクで一般市民や子どもたちが飢餓や病気で苦しんでいるため、イラク原産の石油と交換に食料や医療品を送ろうという人道的な支援計画だった。総額640億ドルにも及ぶ国連主導の大プロジェクトだったが、この巨額マネーに中東社会を牛耳るフィクサー、政治家、海外の様々な企業が群がり、美味しいところをしゃぶり尽くした。横流しされたお金の多くはフセイン政権へ、さらにはイスラム国(IS)にまで渡ったと言われている。

 本作の原作小説『Backstabbing for Beginners』を執筆したのは元国連職員のマイケル・スーサン。「映画に描かれていることはほとんど事実。大物政治家や企業がお金を手にする代わりに送られてくる支援物資は、ほぼ期限切れの医療品や犬が食べるような食料だった」と語っている。2001年にノーベル平和賞を受賞したコフィー・アナン国連事務総長の長男コジョ・アナンもこの事件に関わっていたというから、国連の看板を利用した悪質な組織犯罪だったことが分かる。

イラク市民支援のために集められた総額640億ドルの多くは、サダム・フセイン政権やイスラム国(IS)へと流れていったと言われている。

 映画の主人公となるのは、原作者をモデルにした国連の新人職員マイケル(テオ・ジェームズ)。マイケルの視点から、国連の内情やイラクでの活動状況が描かれる。2002年、青年マイケルはアフガニスタンで亡くなった父親のような外交官になりたいと熱い志を胸に国連入りを果たす。マイケルの上司となるのは、国連事務次長のパシャ(ベン・キングズレー)。パシャは我が子を幼い頃に亡くしており、マイケルを一人前の外交官に育て上げようと取り立てる。「石油・食料交換プロジェクト」の責任者であるパシャの期待に応えるべく、イラクへと向かうマイケル。だが、そこでマイケルが見たのは平和な復興には遥かに遠い、イラク戦争を間近に控えて緊張感が高まるバグダッドのキナ臭い社会情勢だった。

 現場経験の長いパシャは、新人職員であるマイケルに貴重なアドバイスを与える。「嘘はつくな。ただし事実を選べ」と。虚偽の報告書を提出すると、それが証拠となり、外交官として命取りとなる。だから、決して嘘はついてはならない。自分にとって都合のいい事実だけを選んで報告せよと、マイケルを指導する。それがパシャの身を持って学んできた処世術だった。パシャの指示に素直に従えば、今の国連内での出世は間違いない。だが、バグダッドの病院にまともな医療品は届かず、子どもたちが次々と命を失っている現実を前にマイケルは苦悶する。志を抱いて国連入りした頃の自分に嘘をついてもいいのかと。


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