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「犯人グループを知っていても言えない!?」安田純平氏会見を表情分析の専門家が斬る!

■「凡ミス」に込められた感情

 最初は、安田氏が拘束された経緯を語る場面です。このトピックについて語る安田氏からは「言動不一致状態」が観察されました。安田氏は何度か違和感を抱くものの、ガイドに促されるままにシリア入りをしたといいます。ほどなく自身が誘拐されたことに気づくのですが、安田氏はこれを「凡ミス」と言います。「凡ミス」という軽い言葉の響きに対して、安田氏の表情からは感情的な様子が垣間見られ、この出来事に対して「凡ミス」ではなく、大きな失態だと認識していることが推論されます。

 具体的には、♯2(5:04)の場面です。「ま、そうですね。両腕をまぁ、強くではないんですが、ま、つかまれるというか、ま、なかば促すようではあったんですが~略~移動していきました」との発言時、の最初の「ま、」という瞬間、右の頬と口角が引き上がります。これは軽蔑の微表情です。

 軽蔑とは、人あるいは自分を見下す感情です。この感情の現れが、強い表情筋の動きと共に生じています。表情筋の強さと感情の強さとは連動していますので、強い軽蔑を抱いていることがわかります。ガイドの振る舞いが通常のガイドとは違うと安田氏は思ったのでしょうか。そうだとすれば、違和感にもっと敏感に反応できなかった自分に対する軽蔑だと思われます。あるいは、自分をだましたガイドに対する軽蔑でしょうか。会見から得られる情報では、これ以上軽蔑の理由はわかりません。しかし、少なくとも、「凡ミス」という軽い言葉で表現できるようなものではないと、安田氏自身も自覚されているのではないかと考えられます(なお「凡ミス」という言葉自体は、♯2(5:04)の場面ではなく、♯14(4:48)の場面で安田氏の口から語られます)。

■犯行グループについて、まだ語れることがある?

 次は、犯行グループの名前について、安田氏が思考をめぐらす場面です。このトピックについて語る安田氏からは、感情を抑制している様子が見られ、安田氏からさらなる聞き取りが可能な箇所だと考えられます。安田氏は拘束中、さまざまな視点から犯行グループに関する情報収集をしていたことが会見の説明でうかがえますが、結果的には犯行グループの名前は不明としています。しかし、この犯行グループに関して、まだ語れることがあると推論します。

 例えば、♯3(4:57)の場面です。「最後まで、彼らの組織名というのは、えー、基本的には言われていません。あの、(い)、はい」との発言時、「えー」のとき、口角が水平に引かれます。これは恐怖の微表情です。また「あの」と「はい」の間の一瞬に、上唇が引き上げられ、鼻の周りにしわが生じています。これは嫌悪の微表情です。

 恐怖とは、身体・精神の安全が損なわれることに対して生じる感情です。一方、嫌悪とは不快な人・モノ・言動に対して生じる感情です。なぜ犯行グループの名前について話している場面で恐怖を抱き、不快なモノにフタを閉める嫌悪を抱いたのでしょうか?

 さらにこの場面をよく見ると、「あの」と「はい」の間に一瞬だけ、口の形が「い」となるのがわかります。恐怖を感じ、「い」という言葉とともに嫌悪感情をのみ込んだと考えられます。「い」のあと、なんと言おうとしたのでしょうか?

 また、♯16(2:30)の場面では、「私を捕まえた組織が何者なのかということは、えーこれは当然んー暴くべきだと思っていまして、~略~関心を持ち続けていただきたいと本当にこれはお願いとして、えー思っています」と発言し、「これは当然んー」から「暴くべき」まで 熟考を意味するパラ言語(編註:イントネーション、リズム、ポーズ、声質といった、文字によっては伝達されない情報)が聞き取れます。なぜ「暴くべき」という言葉を発する前に熟考したのでしょうか? 記憶を想起するときに熟考が起こるのは自然ですが、ここはこれに該当するようには思えず、文脈に合いません。

 恐怖・嫌悪の抑制及び文脈に合わない熟考が生じていたことから、犯行グループの組織名について明らかになると自分自身や今後の取材に悪影響があり、「知っていても言えない」「本当に知らないが、これ以上の推論はやめたい」と考えているのではないでしょうか?

 会見の様子から、安田氏は詳細なメモと高い記憶力及び推論力を持っていることがわかります。さらに、記者からの質問に刺激され、思い出したかのようにさまざまな追加情報が加わる様子が垣間見られます。このことから、犯行グループについて、さらなる聞き取りが可能であり、まだ有力な情報を得られる可能性が考えられます。

●しみず・けんじ

株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーのひとり。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけに、ウソや人の心の中に関心を持つ。現在、官公庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析や、刑事ドラマ(『科捜研の女 SEASON 16』テレビ朝日系)の監修も行っている。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。現在、ハーバービジネスオンラインに連載中。

最終更新:2018/11/05 18:00
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