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誤解されたからこそ売れた? THE YELLOW MONKEYの根底にある“シリアスな表現衝動”

黄金期に比べ、最近の楽曲はシリアス!?

 そして圧巻の「BURN」と、名曲が次々とリリースされていったのだった。

 これが97年までのこと。この数年間は彼ら自身がメジャー化を図り、それが見事にハマッた時期だった。立て続けに聴くと、音楽シーンの中で一時代を築いたバンドのすごみをあらためて感じる。

 4人のルックスも華やかで、すごくセクシーだ。そこには音も含め、グラムロックをはじめとしたクラシック・ロックの影を見ることができる。しかも、歌メロには歌謡曲的な匂いがあって、そこが多くの人に支持を得た理由のひとつだろう。当時は渋谷系的な、洗練された音楽が好まれる傾向にあったが、イエモンはその風潮に真っ向から立ち向かい、成功を収めたのだった。

 で、そう、こうした黄金期のシングル群と比べると、このところの楽曲には、ポップな感覚や突き抜けた音というより、空気感や質感、そしてそこに込められたものを味わう作品が主体になっている感がある。いわばシリアスめの傾向にある、というか。あくまでシングルやリード曲レベルでの印象に絞ると、だが(昔も今も、アルバムにはさまざまな方向性の楽曲がある)。

 ただ、あえて記しておこう。イエモンは出発点からシリアスな表現衝動を抱えていたバンドなのである。

 今回の新作『9999』での彼らも、大人に……50代になったイエモンの真摯なスタイルを貫いていて、素晴らしいと思う。そこには「I don’t know」で唄っているように、人生の残り少ない時間を必死に生きようとする男たちの姿があるのだ。

 そして「こんなにヒット曲を並べておきながら、あれが入ってないじゃん!」と思っている人の声が聞こえてきそうなので、そのリンクを張ることにする。このバンドにとって重要なナンバーであり、また日本のロック史上に残る名曲の「JAM」である。

 彼らは16年に再集結/再始動したのだが、その年末の『紅白』に出場した際にこの「JAM」を唄っている。元のシングルが出たのは96年2月で、先ほどの快進撃の序盤のあたりだ。飛行機事故を伝えるアナウンサーのくだりの歌詞が話題になった(そして今でもここについてあれこれ言われることの多い)楽曲である。

 で、当時、僕の知り合いで、後追いでこの「JAM」を知った人が、「ああいう歌を唄うバンドなんだね。かなり意外だった」と言っていたのを覚えている。

 その声を聞いて、あぁなるほど、と思った。なにせド派手で豪快なイメージの強かったであろうバンドだ。それが飛行機事故のあたりの表現を含みながら、自分と世界(社会)との距離を唄おうとしていたことが意外に思われるのは当然とも思った。この「JAM」を書いた背景についてヴォーカルの吉井和哉は、前年に阪神・淡路大震災やオウム関連の事件などがあって、あまりに不安定だった社会状況にも影響されたと話している。

 また、シングルに限っても、90年代後半に発表された「球根」や「離れるな」、それに「バラ色の日々」など、張りつめたトーンを持つ歌や、人がどうにか生きようとする姿が見える楽曲はある。

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