深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.543

『カメ止め』に続く新風が映画界に吹き始めた!! 銭湯が舞台の殺人サスペンス『メランコリック』

文=長野辰次

“都会のオアシス”銭湯の裏の顔を描いた『メランコリック』。昨年話題を呼んだ『カメラを止めるな!』に続くヒット作となるか。

 いくつかのメランコリックさが掛け合わさり、1本の新しい映画が誕生した。それが銭湯を舞台にした犯罪サスペンス『メランコリック』だ。無名の監督、俳優たちによる低予算の自主映画だが、閉塞的な社会に対して現代人が感じる憂鬱さをきれいさっぱりに洗い流す快作となっている。

 1987年生まれの田中征爾監督は、本作が長編デビュー作となる。映画づくりを学ぶために米国留学までしたものの、帰国後はサラリーマン生活を送っていた。学生時代の同窓会に出席しても、居心地の悪さを感じていたそうだ。田中監督と同年生まれの俳優・皆川暢二も似たような鬱屈を抱えていた。30歳を過ぎても代表作を残せずにいる。俳優仲間と酒を呑んでは「事務所が仕事を持ってきてくれない。もっと大きな事務所だったら……」と愚痴をこぼし合っていた。

 だが、ブレイクできない責任を事務所や世間のせいにしている限り、いくら待っても何も始まらない。自身の不甲斐なさに気づいた皆川は、旧知の仲だった田中監督に映画づくりを持ち掛け、アクションシーンの演出ができる同学年の俳優・磯崎義和も加わり、映像製作ユニット「One Goose(ワングース)」を結成。皆川は主演とプロデュースを兼任し、製作費300万円を調達。会社勤めをする田中監督の体の空く、金曜の夜から日曜日を撮影日に充て、『メランコリック』を撮り進めていく。

 3人がアイデアを出し合った『メランコリック』はこんな物語だ。主人公の和彦(皆川暢二)は自宅暮らしのほぼニート。東大を卒業したものの、卒業後はやりたいことが見つからず、無為な日々を過ごしていた。ある晩、自宅で風呂に入りそびれた和彦は、近所の銭湯へと足を運ぶ。レトロな雰囲気の銭湯は、和彦を和ませた。風呂上がりにロビーで寛いでいると、高校時代の同級生だった百合(吉田芽吹)とばったり再会し、話が弾む。百合に勧められ、和彦はアルバイトを募集していたこの銭湯で働き始める。

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