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神秘のベールに包まれた大嘗祭では何が行なわれていたのか? 「議論なき前例踏襲」に静岡福祉大学名誉教授・小田部雄次氏の見解は

皇居

 天皇の即位に伴い、天皇一代につき一回限りの儀式「大嘗祭」の中核儀式である「大嘗宮の儀」が、11月14日午後6時半ごろから、翌15日午前3時頃にかけて行なわれた。

 皇居・東御苑に、今回の儀式のためだけに建てられた「大嘗宮」で行なわれる儀式では、コメやアワビなどの供え物を天皇が天照大神に捧げ、天皇も同じものを食べる。神殿の内部では天皇が「御座」に座り、「神座」の神と向かい合い、その傍らには寝床としての「寝座」が用意されているとされるが、その内部で何が行なわれているかは、秘儀であるとして、完全には明かされていない。

 この大嘗祭にかかる費用24億円は、公費である宮廷費から出されている。これについて、秋篠宮様は昨年11月の誕生日会見で、「宗教色が強いものを国費で賄うのは適当かどうか。規模を縮小し、皇室の私的なお金である内廷費で負担するべきではないか」と提案したが、その意向は反映されなかった。行なわれるようになったのは7世紀の天武天皇の時代まで遡るとされ、いまも神秘のベールに包まれた大嘗祭。しかし、その在り方は、21世紀にふさわしいものだったのだろうか? 静岡福祉大学名誉教授で皇室制度に詳しい小田部雄次氏に見解を聞いた。

「11月10日の即位パレードとともに、お祝いムードのなか行なわれた大嘗祭ですが、やはりもっと議論がなされるべきであったと思います。内廷費で行なわれるのなら、皇室の私的な行事ということでその内容が秘密であってもいいと思うのですが、国民の公費である宮廷費で賄われる以上、秘儀であるから内容は明かせないというのは、やはりおかしい。

宮廷費を使う以上は、中で何をやっているのかきちんと明らかにして、お金もどこにいくらかかったのかとい明細をきちんと国民に公開するべきだと思うのです。庭積机代物(にわづみのつくえしろもの)という各都道府県の特産物は献上ではなく買い上げになりましたが、何をどんな基準でいくらにしたのか不明です。また従来、式後は埋めていたのですが食品ロスの考えから利用することになったようですが、誰がどう利用したのかも不明です。公金なので明確にすべきでしょう。

悠紀田や主基田も、亀の甲羅のひびで占う亀占(きぼく)でどこの場所か決めてそこの新米を取り寄せたというのですが、この亀占もどういうふうに占っているのかは秘密ということになっていて、なんだか怪しいですよね。

前回の平成になったときの大嘗祭のときは、政教分離に違反するのではないかという訴訟や反対運動もあったのに対し、今回はそれほど反対の声も広がらず、前回を踏襲する形で行なわれてしまいましたが、台風などの災害が続くなかで24億円も使ったことも含めて、本当に令和の大嘗祭はこれでよかったのか。この次の大嘗祭が何十年後になるのか分かりませんが、そのときまでには今度こそきちんと議論して、いまの時代にふさわしい大嘗祭の在り方というのを検証してほしいです」

戦前には、民俗学者の折口信夫(おりぐちしのぶ)によって、天皇霊が天皇の身体に入る儀式、という説も唱えられたという大嘗祭。毎年勤労感謝の日に行なわれる新嘗祭(にいなめさい)が、天皇の代替わりの年だけに特別な形になり、新しい天皇が国と国民の安寧と五穀豊穣を祈るとされるのが大嘗祭だが、今回も核心部分は国民には謎のままだった。

 小田部氏の言う通り、国民の税金を使う以上、秘儀のベールに包まれたままでよかったのかという問題提起は、もっとなされるべきだったのではないだろうか。なお、11月の22日、23日には、天皇が伊勢神宮へ大嘗祭の儀について報告のため参拝する予定になっている。

最終更新:2019/11/16 12:12
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