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『全裸監督』超えのタブーは過去作にあり!

奇作・怪作を蒸し返す! 名脚本家たちが描いたデタラメ90~00年代テレビドラマ回顧録

野島伸司に内館牧子――90年代作家のデタラメ

 ParaviとTBSオンデマンドを持っているTBSは比較的、動画配信のアーカイブ率が高いが、90年代以前になるとリアルタイムで大ヒットした作品でも配信していなかったりする。それにしても『鉄板少女アカネ!!』が配信されて、『高校教師』(93年)『人間・失格』(94年)『未成年』(95年)と続いた、野島伸司90年代ダーク路線絶頂期の傑作『聖者の行進』(98年)が配信されないのは間違っていると思うが。筆者の通っていたゲーセンでも主演・いしだ壱成の物真似がはやりまくったが、当時は裁判中だった実際の事件がモデルの上に、いかりや長介演じる弁護士が登場する終盤まで何の救いもない展開でスポンサーの三共も降りていたから、現代のコンプライアンス的に難しいのかと思いきや、実際には野島作品の常連だったいしだ壱成や酒井法子が逮捕されたことが大きいようだ。覚せい剤やめますか、それとも配信やめますか。

 時代の徒花として野島伸司のダーク路線はよく語られるが、90年代のテレビドラマは70~80年代を牽引した山田太一、倉本聰、市川森一などの大御所脚本家が失速した代わりに、野島、内館牧子、野沢尚、三谷幸喜、北川悦吏子などの野心的な若手脚本家がデタラメな話を書きまくり、ベテランの中島丈博や井沢満もゲイカルチャーに刺激を受けて新境地を開拓するなど、カオスな時代だった。後者はどうなのかと思わなくもないが、プロデューサー主導のチームライティングで積極的に海外市場へ展開していく洋ドラと違い、日本のテレビドラマはガラパゴス的に進化していった。

 結果として、脚本家や俳優個人の得意分野が強調され、90年代以降は小劇場演劇の影響も受けたことで、次々と異様な世界観の作品が生まれた。ターニングポイントは、アングラ劇団出身の佐野史郎が通俗的なキャラクターを山崎哲の実録犯罪戯曲で再解釈した怪演に引きずられ、古典的メロドラマだった企画がサイコスリラーになってしまった『ずっとあなたが好きだった』(92年)だと思うが、これによって、映画のヌーヴェル・ヴァーグの影響を受けつつ、古典的で教条主義的な『木下恵介アワー』(64年)や『ありがとう』(70年)へのカウンターとして成立していた久世光彦や佐々木守の「脱・ドラマ」路線……『お荷物小荷物』(70年)や『ムー』(77年)は完全に過去のものとなり、代わりに、アングラ演劇の影響が濃い、新世代の日本的テレビドラマが増殖したのだ。

 さて、女同士のドロドロ愛憎劇といえば内館牧子であり、『週末婚』(TBS/99年)は内館脚本の代表作だ。互いの不幸だけを願う因業な姉妹(松下由樹、永作博美)が誹謗中傷、公開暴露、ストーキングなどあらゆる手段で嫌がらせを繰り広げる物語は、喩えるなら『ダークナイト』のジョーカーが二人に分裂して互いに殺し合う地獄だが、内館作品といえば『寝たふりしてる男たち』(日テレ/95年)も忘れてはいけない。『週末婚』で阿部寛や仲村トオルを地獄姉妹の生贄に捧げ、『プロレスラー美男子烈伝』(文藝春秋)で「リングではこんなに美しい男が闘っている」と独自の美を提示しつつ、美の基準に反している朝青龍は罵倒し続けた稀代のマッチョイケメン愛好家・牧子の性の目覚めだったマイトガイ・小林旭を主演に担ぎ出したサラリーマンドラマだ。なので、いつもの女同士の愛憎劇ではなく、主人公へ嫉妬する男たちの感情を通してアキラの危険な雄の匂いを強調しているのが面白いが、つい最近も『バイキング』で坂上忍とお茶の間を恐怖で震撼させ、一回でコメンテーターを降ろされた昭和の人間凶器アキラである。ちょい悪オヤジ萌えどころではない牧子の危険すぎる萌えは世間には理解されなかった。

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