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【障害者殺傷事件初公判】被害者の”匿名報道”の裏に、マスコミが助長した障害者差別の歴史

文=萩原雄太(はぎわら・ゆうた)

 相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年7月、障害者ら45人が殺傷された事件の裁判員裁判が8日、横浜地裁で始まった。殺人などの罪に問われた元施設職員・植松聖(さとし)被告は起訴事実について「(間違いは)ありません」と認めたものの、弁護側は当時の被告が精神障害の影響により心神喪失などの状態だったとして、無罪を主張した。

 逮捕直後、植松被告は「重複障害者が生きていくのは不幸だ。不幸を減らすためにやった」と自らの「正義」を語り、波紋を呼んだが、本サイトでは当時、『障害者殺しの思想』(1979年刊行。2015年に現代書館から復刊)をもとに、植松被告が語る「正義」と日本における障害者差別の歴史をひも解いた。初公判という機会に、その記事を再掲したい。
(編集部)

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「私の目標は重複障害者の方が家庭内での生活、及び社会的活動が極めて困難な場合、保護者の同意を得て安楽死できる世界です」

 相模原の障害者施設「津久井やまゆり園」で19人の入所者を殺害した植松聖容疑者は、今年2月、衆議院議長に宛てて、このような手紙を書いている。障害者が「安楽死できる」という勝手極まりない発想だけでも身の毛がよだつが、犯行後の供述では「重複障害者が生きていくのは不幸だ。不幸を減らすためにやった」と、自らの「正義」を語っている。障害者に対する冷酷なまでのその発想は、ナチスドイツによる障害者の安楽死政策「T4作戦」にも影響を受けたとみられている。

 そんな植松容疑者の「正義」を、誰もが「あり得ない」と思うだろう。けれども、信じられないことに、少し前の日本では、彼のような正義を語る人は少なくなかった。脳性マヒ者の組織「青い芝の会」会長を務め、自らも脳性マヒの障害を背負いながら社会に対して当事者としての言葉を発信し続けた、横田弘による著作『障害者殺しの思想』(1979年刊行。2015年に現代書館から復刊)から見てみよう。 

 本書は、78年2月9日に起こった母親による脳性マヒを患った障害児殺しの記述から始まる。自らの子どもを殺し、自殺を遂げた母親に対し、「献身の母、看病に疲れ? 身障の息子絞殺」(毎日新聞)、「雨の街 一夜さすらい 母親、後追い自殺 身障の愛児殺し」(読売新聞)などの見出しで事件を報道するマスコミ。その目は、明らかに殺された子どもに対してではなく、母親への同情的に向けられていた。そんな世間に対して、憤りを隠さない横田。脳性マヒの当事者である彼は、重い筆致で「障害者児は生きてはいけないのである。障害者児は殺されなければならないのである」とつづる。そして、この事件の原因を、母親の介護疲れではなく、障害者やその家庭を取り巻く社会の差別に見ている。

「勤君は、母親によって殺されたのではない。地域の人々によって、養護学校によって、路線バスの労働者によって、あらゆる分野のマスコミによって、権力によって殺されていったのである」

 48年に施行された「優生保護法」は、「優生学上不良な子孫の出生を防止し、母体の健康を保護する」、つまり「不良」である障害児の出生や障害者の出産を防止する法律だった。96年、「母体保護法」と改名され、優生思想は排除されているが、わずか20年前まで、先天性の障害者は「不良」と見なされていたのだから驚くばかり。そんな時代を反映するかのように、社会的な地位のある人間すらも、今では考えられないような差別的発言を行っていた。元衆議院議員、日本安楽死協会初代理事長の太田典礼は、「週刊朝日」(朝日新聞出版)72年10月27日号の記事において、こう語っている。

「植物人間は、人格のある人間だとは思っていません。無用のものは社会から消えるべきなんだ。社会の幸福、文明の進歩のために努力している人と、発展に貢献できる能力を持った人だけが優先性を持っているのであって、重症障害者やコウコツの老人(編注:認知症の高齢者)から『われわれを大事にしろ』などといわれては、たまったものではない」(原文ママ)

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