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ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」

不倫報道は逆にチャンス!? 唐田えりか、女優としてのホントの実力

東出昌大の棒演技と唐田えりかの”薄味感”が絶妙マッチ!

 2人はプライベートでも台本の読み合わせをしていたと伝えられているが、唐田にとって東出は恋人であると同時に、師匠のような存在だったのではないかと思う。

 実際、過去作の何倍も演技が自然なものとなっており、ふつうの女の子が恋愛によって揺らぐ危うい瞬間を見事に演じていた。人によっては棒読みではないかと思うくらい力の抜けた演技だが、これは監督の演出はもちろんのこと、東出の演技に唐田が引っ張られた結果だろう。

 この力の抜けた芝居が唐田の薄味感とマッチした結果、どこにでもいるように見えるがめったに存在しない平凡な女性という、稀有なヒロインを演じることに成功したのだ。

 この2人に限らず、共演した役者同士が恋人関係に発展することはよくあり、ハマり役に出会うと、役者は演じた役に引っ張られがちだ。

 そもそも東出と杏が結婚したのも『ごちそうさん』で夫婦役を演じたからで、おそらく東出と唐田は、役に入り込みすぎて、そのまま抜けられなくなってしまったのだろう。善悪は別にして、役を演じるということは、それくらい危うい行為なのだ。

『寝ても覚めても』以降の唐田は女優として一皮むけ、出演作も急増していたが、今回の不倫騒動後、清純派路線を続けることは困難だろう。だが、ここで消えてしまうには惜しい逸材である。

 アイドルやタレントと違い、女優は必ずしも好感度が高い必要はないのだから、今のイメージを逆手に取ればいい。演技や表現に対し、かなり貪欲な女優だろうから、清純派路線に縛られて演技の幅が狭まる前に、路線変更できてよかったと思うくらいでいいのではないかと思う。清純派を装って男を奪うビッチ・ヒロインとしてぜひ復活してほしい。

成馬零一(ライター/ドラマ評論家)

1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。ライター、ドラマ評論家。主な著作に『キャラクタードラマの誕生 テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)、『テレビドラマクロニクル 1990→2020』(PLANETS)などがある。

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Twitter:@nariyamada

なりまれいいち

最終更新:2020/01/30 11:41
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