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沢尻エリカ被告に判決【神保哲生×宮台真司×松本俊彦】薬物事件をめぐる刑罰と報道の問題点

文=構成/橋川良寛・blueprint

「いじめ」の感覚に近い日本の有名人薬物報道

女優・沢尻エリカの逮捕は大々的に報じられた。

神保 松本さんは、よく「刑罰ではなく治療を」という言い方をされています。治療を受けないと、刑務所を出てきてまたやってしまう人が多く、ある意味で刑罰が治療を阻害している面があるわけですが、日本の場合には規制利権というものもあり、簡単に変わりそうにない。これを変えるにはどうしたらいいのか。日本は薬物問題で誰かが捕まると、その人が出ているシーンをカットしたり、ドラマを放送しないのが当たり前になっていて、誰が代役になるかがトップニュースになるような状況です。日本の薬物に対するややもするとヒステリックにも見える反応は、どこから来ているのでしょうか?

松本 僕は、いじめの心理に近いと思っています。マイノリティの人たちを見つけると、そこでみんな一斉に攻撃することによって排除する。順法精神みたいなことを強調する人もいますが、みんな想像力がなくなっていて。合法か違法かということだったら、極端な話、ホロコーストやアパルトヘイトだって、その当時、その国では合法だったでしょう。そういうことを疑うような気持ちがなくなってしまっている。

宮台 僕の言葉でいう、言葉の自動機械、法の奴隷、損得マシーンが増えるということです。フロイト派的にいうと、これはすべて不安の穴埋め。実際の内容に意味があるかどうかではなく、自分の心に効果があるから言っているだけ、という面が非常に強い。それが現状だとすると、実際に何が社会に役立つのかという視座にできるだけ多くの人にシフトしていただくにはどうすればいいかですね。

松本 「ダメ。ゼッタイ。」の洗脳を解くのは大変で、以前、学校にDARCの人を連れて行こうとしたら、「薬物依存症から回復できることを知ると、使うバカがいるからやめてほしい」とストップがかかったことがありました。とにかく我々は、粘り強くエビデンスを出していくことだろうと思いますが、ただマスメディアがなかなか取り上げてくれない。

宮台 そうですね。インターネットが広がったことで、そういう情報を自分で探索している人は、昔と違ってグローバル水準の標準をそれなりに知っていらっしゃると思いますが、その情報とテレビの情報の乖離が大きすぎる。

神保 マスメディアに関しては、脊髄反射的に「ダメなものはダメ」という発想で、あまり深くモノを考えずに番組を作っているところはあるでしょう。ただ、TBSラジオの荻上チキさんの番組なんかはある程度独立した編集方針で番組を作っているから、薬物問題でもしっかりとした問題設定をしています。そういう番組が増えてくれば、それまであまり深くモノを考えずに「ダメ、ゼッタイ。」だけで番組を作ってきた人たちも、流れに乗り遅れるのは怖いから、徐々にスタンスを変えてくる可能性はあると思います。

 メディアの報じ方については、NPOなどによって、こういう報道は避けるべきだというガイドラインも作られていますね。こちらについてもご説明ください。

松本 まず、白い粉や注射器のようなイメージカットを使わない。それが再使用のトリガーになってしまうからです。また、例えばピエール瀧さんが捕まったとき、韓国紙幣のウォンを使って……という、細かいことが報じられていましたが、これも関心を煽ってしまう。あとは人格否定ですね。16年に高知東生さんが麻取に捕まったとき、「来てくださってありがとうございます」と言いました。これに対して、TBSの『ビビット』という番組でテリー伊藤さんが「何が『ありがとうございます』だ、全然反省していないじゃないか」と言っていましたが、僕の患者さんにも「ありがとう」という人は多く、つまり「やっと薬をやめられる」と安心するんです。薬物依存症の人たちは、一連の刑事司法の手続きの中で、ネガティブな自己ラベリングをしています。そういう人たちに人格否定のような言葉を投げかければ、一生懸命治療した先に希望が見えなくなって、ドロップアウトしてしまう。

 また、雇用を奪ってしまうことも問題です。僕も何人か著名人の治療をしていますが、彼らこそ、仕事を奪われると本当にお金がなくなってしまう。そんなときに、「キャバクラの雇われ店長をやってくれれば、月200万円支払う」などという話がくれば乗ってしまいやすいし、そこでまた薬物と遭遇しやすい環境に身を置くこととなってしまいます。安心して治療に打ち込むには、経済的な保証、つまりなんらかの収入源が必要なのです。その意味でも、映画の配給停止やCDの回収といったことはやめていただきたいです。

神保 あとは憶測で勝手に物語を作り、転落や堕落の結果、薬物に走ったというような定番の物語に落とし込むことも問題だと。

松本 本当に失礼だし、変な刷り込みをしないでほしいと思います。とにかく言動にも「反省」を求めますが、僕らの病院に初めて来たとき、反省の言葉をたくさん言う人ほどすぐに治療に来なくなりますし、むしろ「反省は必要ないから、とにかく治療プログラムに参加してくれ」と思う。

神保 「スクープとして扱わない」というのもありますが、これはどういう意味ですか?

松本 事実がはっきりしないのに、疑惑の段階で書き立てたり、こっそり治療しているものも書かれていたり、週刊誌を読んでいると驚くことが多いです。明らかに警察や麻取が逮捕前にリークしている。捜査の段階ではまだ推定無罪の身柄ですし、守秘義務違反としてかなり深刻だと思います。許してはいけない人権侵害です。

神保 一方で「家族の支えで構成しました」みたいな美談仕立てにするのもよくないのですね。

松本 家族は振り回されて本当に苦労しています。むしろ家族が手を離し、我々支援者がサポートするほうがうまくいくんです。それなのに、「奥さんがしっかり支えて」などと言われてしまうと、本来の依存症治療のあるべき方向と反対に行ってしまう。家族ではなく、地域で支え合わなければいけません。

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