日刊サイゾー トップ  > 学校にタブレット…文科省の思惑
【シリーズ】「読解力低下」騒動のウソとホント(3)

「読解力低下」騒動のウソとホント(3)学校にタブレット配布を構想する文科省の思惑

PISAと文科省のイタチごっこは続く

 したがって、今や新たな読解力(従来のPISA型読解力と情報活用能力のハイブリッド型)が学教教育で求められるようになった、そして、それに応えるのがICTも活用した教育スタイルへの移行を意図するGIGAスクール構想なのだ、と結論づけている。

 その試みが成功するかどうかはこれからにかかっているから、深入りはしない。

 我々が知っておくべきなのは、結局のところ、PISAの“読解力”テストと文科省の施策はイタチごっこになっている、ということだ。

 日本の国語教育で扱ってきたような“読解力”とは異なる“読解力”像をPISAは2000年に示した。それに追いつくべく、まずは日本の多くの教育関係者にも理解しやすい読書推進活動が行われ、並行して、論述式に苦手意識を持たない子どもを育てるべくアウトプット重視の教育へシフトしてきた。

 そうしてキャッチアップした結果、09年調査ではランキングが上昇、12年ではトップに立った。

 ところが、15年、18年でOECDがデジタルスキル、情報活用力というまた新たな“読解力”像を提示し、求めてきた途端、日本の順位は下がった。

 このように、評価の基準はPISAが示し、文科省は遅れて追いつくための施策をやる――この構図は20年間変わっていないし、今後も変わらないだろう。

 まずこれを前提に話をしないと、順位が上がった/下がったことだけ見て騒いでも意味がない。

 そして、メディアが「PISA型読解力とは何か」「どのように変遷し、日本の教育界はどう適応しようとしてきたか」をきちんと周知しないがために、PISAの結果が発表されるたびに不毛な読解力論争が起こり、「子どもの本離れが悪い」という話がループする(そのたびに私も同じような記事を書くのだろう)。

 ところで、こうした“読解力低下”騒動の影響によって一時期、急激に伸長し、しかし風向きが変わったことで伸びが止まった運動がある。

 全国の小中高校で行われている“朝の読書”だ。(次回につづく)

マーケティング的視点と批評的観点からウェブカルチャーや出版産業、子どもの本について取材&調査して解説・分析。単著『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社新書)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)など。「Yahoo!個人」「リアルサウンドブック」「現代ビジネス」「新文化」などに寄稿。単行本の聞き書き構成やコンサル業も。

いいだいちし

最終更新:2023/01/26 18:33
12
ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

水原解雇に間に合わなかった週刊誌スクープ

今週の注目記事・1「水原一平“賭博解雇”『疑...…
写真
イチオシ記事

さや香、今年の『M-1』への出場を示唆

 21日、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で「賞レース2本目やっちまった芸人」の完結編が放送された。この企画は、『M-1グランプリ』(同)、『キ...…
写真