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中国が有効性を認める「アビガン」、なぜ治験が進められなかったのか?

文=鷲尾香一(わしお・こういち)

イメージ画像/出典:Hamatti

 安倍晋三首相は4月7日、新型コロナウイルスの感染拡大に対して、「緊急事態宣言」を東京都など7都府県に発出した。同時に新型コロナウイルスの感染拡大に対する「緊急経済対策」を閣議決定した。この緊急経済対策で注目されるのが、治療薬として新型コロナウイルスへの効果が期待される抗インフルエンザ薬「アビガン」だ。「アビガン」とはどのような薬なのか。

 7日夜の記者会見で、安倍首相はアビガンについて、「すでに120例を超える投与が行われており、効果が出ている」と述べた。また、今年度内に「アビガン」200万人分の備蓄を行うことを明らかにしている。

 アビガンは富山大学医学部の白木公康教授と富士フイルム富山化学が共同研究で開発した抗インフルエンザウイルス薬だ。細胞内におけるウイルスRNAの複製を妨げることで増殖を防ぐ。ウイルスには、ゲノムとしてDNAを持つDNAウイルスとリボ核酸(RNA)をゲノムとするRNAウイルスに分けられる。通常15歳以上の成人は、1日目は8錠を1日2回、2日目~5日目は1回3錠を1日2回使用する。

 アビガンの新型コロナウイルスへの効果は、発生源となった中国で多く報告された。

軽症に限るとアビガン投与で4日以内に症状が消えた報告も

 2月13日付の中国・科技日報は、「科学研究グループは深圳第三人民病院で臨床研究を実施し、26名の患者が登録された。このうち中程度の症例は25例であり、重篤な症例は1例であった。アビガンは明らかな副作用を発現せず、(中略)発熱患者に対する比較的良い解熱効果を有し、薬を服用してから2日以内に72%の発熱が緩和された。また、3日以内の肺の影像学的好転率は38%で、6日間以内の肺の影像学的好転率は70%であった」と報じている。

 2月22日には政府が新型コロナウイルスの感染者を対象にアビガンの投与を推奨する方針を固め、加藤勝信厚生労働大臣は患者への投与を開始したことを明らかにしている。

 3月23日には、武漢大などの研究チームが新型コロナウイルスによる肺炎に対するアビガン投与で、軽症者に限ると投与後7日以内の回復率が7割を超え、有効性が確認できたと発表した。軽症例に限ると多くの症例がファビピラビル(アビガン)投与で4日以内に症状が消えたと報告している。

 中国からのこうしたアビガンの有効性に対する報道がある一方で、日本ではアビガンの治験すら進んでいない状況だった。しかし、3月31日に富士フイルムが日本国内で新型コロナウイルスに対するアビガンの治験を開始したと発表した。

 4月3日には、菅義偉官房長官がアビガンについて「現時点で約30カ国から提供要請がある。所要の量を日本政府から無償で供与すべく調整している」ことを明らかにし、同月7日には茂木敏充外務大臣は、国際機関を通じて20カ国に無償で供与すると発表した。

 世界が注目するアビガンが、開発国である日本で治験も行われていなかったのには理由がある。アビガンには重大な副作用があることが分かっているためだ。

 アビガンは、動物実験で「催奇形性」が認められた。催奇形性とは妊娠中のある時期に使用すると胎児に奇形が生じるおそれを指す。また、男性の場合には精子に異常が出ることも認められている。このため、今回のアビガンの投与についても、妊婦および妊娠の可能性のある女性への投与は行えない。また、男女を問わず、投与期間中および投与終了後7日間は、なるべく性交を行わず、行う場合は必ず避妊するよう指示されている。それでも、新型コロナウイルスに対する有効薬がない中、今のところ“アビガンに頼らざるを得ない状況”というのが正直なところだろう。

 7日の記者会見で安倍首相は、「新型コロナウイルスのワクチン、治療薬の開発は進んでいる」と述べているが、ワクチンや治療薬がどの程度の期間で開発され、投与されるのか、具体的なメドは示されていない。

鷲尾香一(わしお・こういち)

鷲尾香一(わしお・こういち)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」ほかで執筆中。

Twitter:@tohrusuzuki

最終更新:2020/04/09 12:12

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