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ブラジル・フォトルポルタージュ【後編】

巨大祭典「リオのカルナヴァル」から学ぶ、人種の多様性がもたらす希望とは?

ブラジルに学ぶヒント①「豊かな人間関係と団結力」

 「日常から、代々つながる生涯の近所付き合い」となる地域文化活動を大切に共有。世代、地域や社会の分断や個人の孤立を許さず、「団結と協力を基本としたご近所社会」が基本。

 ブラジルは家族・親戚や近所の人間関係をとても大切にし、生涯において密接な関係を築きます。日頃から地元文化活動を通じて、仕事や学校のあとにコンスタントに集まり創作活動する老若男女の仲間がいます。そこで異なる意見や情報を検証・ディスカッションし、風通しの良い人間関係を保ち、政治やメディアに支配されない、独立型地域共同体を皆で作り維持しているのです。だから「社会の分断や個人の孤立」が起きづらくなります。「隣近所に誰が住んでいるか知らない」なんてことがなく、わざわざ遠くで人間関係を作る必要がない。ごく自然なことをしているのかもしれませんね。

 ところで、上下の写真は海から700km以上内陸の大乾燥帯地帯にある片田舎の町、Petrolina(ペトロリーナ)のカルナヴァル2020の様子。昨年から今年2月まで同地で合計3カ月ほど活動した筆者が撮影。

 ブラジルの大きな特徴は「移民と混血」の歴史です。写真に写るみなさんはポルトガルやスペインから18世紀初頭に移民してきた人々と先住民、さらに奴隷として連行されたアフリカ系民が混血を重ねた末裔。彼らは干ばつの厳しい大乾燥地帯で大変な苦労して生き残ってきた人たちの子孫なのです。その中で代々培ってきた人生のノウハウが有事に力を発揮するのかもしれません。

 現在のペトロリーナは周辺を流れる大河、サンフランシスコ川の水を使った治水・灌漑農業技術は日本からの移民の尽力も手伝い進歩を遂げ、人口約35万人へと増加。世界有数のフルーツ生産地帯としても有名です。

ペトロリーナの町のルーツである歴史的旧市街周辺をパレードする同音楽グループ。困難な気候と悪政による深刻な貧困に苦しんだ歴史を持つブラジル北東部内陸には、現在も危機意識と団結力が人々に根付いている

 17世紀初期(日本は江戸時代初期)から、ペトロリーナの厳しい気候条件による危機や歴史的争乱の中を生き抜いて来た人々=“ペトロリネンセ”たち。典型的な明るいブラジル人気質とは異なり、彼らは今も物静かで真面目な気質が特徴です。同地のカルナヴァルも「ギネス記録を持つ巨大なリオのカルナヴァル」とは比べられないほど小規模なもの。無名のアマチュア200名ほどが伝統的な「マラカトゥ・ナサォン」という打楽器主体の音楽を打ち鳴らし、町の旧市街を2時間ほど練り歩くという簡素なものでした。しかし、これぞブラジルの原風景であり、基本。その心は「自主、自治、自衛、共有、共感、協力」です。

3月に閉幕したリオのカルナヴァル2020。トップリーグのすべてのエスコーラ(リオの各地元に根ざしたサンバ共同体)による熾烈なパレード・コンテストが終わった瞬間、観客がパレード専用スタジアムになだれ込みパレードし、みんなが社会の主役で担い手であることを表す様子

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