日刊サイゾー トップ  > 『映像研』乃木坂・齋藤飛鳥が好演
ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」

ドラマ版『映像研には手を出すな!』で齋藤飛鳥が示した、“女優・乃木坂46”の可能性

MBS『映像研には手を出すな!』

  新型コロナウイルスの影響で新作ドラマの制作が止まり、再放送や過去作のダイジェストで枠を埋めるという異例の状況となっているテレビドラマ業界だが、こういう緊急自体だからこそ生まれる新しい表現というものもある。

 先日放送が終了した『映像研には手を出すな!』(MBS)はまさにそういうドラマで、なんだかよくわからない勢いが感じられる怪作だった。

 物語は浅草みどり(齋藤飛鳥)、金森さやか(梅澤美波)、水崎ツバメ(山下美月)の3人の女子高生がアニメ制作に情熱を傾けるという、ものづくりドラマだ。

 原作は「月刊!スピリッツ」(小学館)で連載されている大童澄瞳の同名漫画。1月にNHKで放送された湯浅政明監督によるテレビアニメが(漫画の理想的なアニメ化として)高く評価された後だったことと、主演の3人が乃木坂46のメンバーということで原作とはイメージが違ったため、前評判はあまりよくなかった。

 そんな逆境の中、ドラマ版『映像研』はCGと演劇的な演出・編集を駆使することで、どうやってアニメの表現と拮抗する映像を実写ドラマで作り出すのかという果敢な挑戦に挑み、驚くべき映像を打ち出していた。

 監督の英勉(はなぶさ・つとむ)は、同じMBSのドラマ枠で浜辺美波主演の『賭ケグルイ』を手掛けている。この作品も、ケレン味たっぷりの役者の芝居と照明を駆使した光と闇のコントラストの極端な映像が印象に残る怪作で、漫画の映像化におけるひとつの回答を示していたが、『映像研』はそれ以上に漫画・アニメ的なドラマである。

 原作漫画以上に強調されている生徒會(生徒会)とさまざまな部活動の対立はごちゃごちゃしすぎており、何をやっているのかわからないが、やもくもな勢いだけはあり、かつての宮崎駿のアニメに登場するモブシーンを彷彿とさせる。

 何より、浅草たちが「最強の世界」としての理想のアニメをイメージする時に立ち現れるメカや風景のCGは、とても見応えがあった。

 そして、一番素晴らしかったのが、主演3人の演技。身長170cmの梅澤は、デカくて金に汚い、口が立つプロデューサー・金森さやかを好演。漫画に比べると若干、キレイすぎる気もするが、作品世界にハマっていた。

 山下は、親がモデルで、自身も人気読者モデルのアニメーター・水崎ツバメを演じた。山下本人もモデルとして活動していることもあってか、役との相性はバッチリで、清楚な雰囲気も水崎の育ちの良さと合っていた。

 そしてなんといっても、設定画と背景を担当する浅草みどりを演じた齋藤である。彼女についての筆者の知識は、乃木坂のメンバーであることと、市販のマスクを掛けると顔全体が覆われてしまうくらい顔が小さいということしかなかった。だから女優としての力量については未知数だったが、浅草を演じる齋藤を見て「なんじゃこりゃ!」と驚いた。

 モデルやアイドルの活動を通して見る齋藤は、きゃしゃでおとなしそうなロングヘアの少女だが、本作の浅草はショートヘアで少年のような女子高生。口調も「ワシは~」とか「~なのじゃよ」といった江戸っ子口調を崩したような、おっさん口調だ。

『映像研』の3人は女子高生という設定だが、男でも女でもどちらでもいけるような性格付けとなっている。中でも浅草は体形も丸っこく、少年のような性格だ。アニメ版ではハスキーボイスの女優・伊藤沙莉が声を当てることでキャラクターに生々しい説得力を与えていたが、齋藤が演じる浅草は真逆のアプローチとなっており、アニメのキャラクターが現実に現れたような、ふわふわとした浮遊感があって、中性的で、まるで天使のようだ。

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