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安倍首相はなぜ「五輪延期」踏み切れずコロナ対策が遅れたのか? 在任9年で“ほぼ実績なし”の現実

文=鷲尾香一(わしお・こういち)

安倍晋三首相

 新型コロナウイルスの感染拡大により、政治は混迷期に突入している。安倍晋三首相は自らの政治信念による方向性を見失い、政権は“レームダック”状態に陥っており、ひたすらに対処療法的な新型コロナウイルス対策を繰り返すにとどまっている。

 今年(2020年)1月7日、自民党本部の仕事始め式で安倍首相は「桃栗3年柿8年」を例えに上げ、「ゆずは9年の花盛り。ゆずまでは責任を持ち、皆さんと大きな花を日本に咲かせたい」と述べた。

 これは2021年9月末に自民党総裁任期を迎えるにあたっての言葉だろう。自民党の党則は「1期3年で連続3期まで(合計で9年)」と定めており、安倍首相は任期となる9年目を迎え、「大きな花を日本に咲かせたい」とした。

 それでは、「大きな花」とは一体何を指すのか。それは「憲法改正」にほかならない。

 すでに安倍首相の通算在職日数は日本の首相として、歴代1位になっている。通算在職日数の上位首相は、佐藤栄作氏が「沖縄返還」を実現。吉田茂氏が日本国憲法を公布し、サンフランシスコ平和条約、日米安全保障条約に調印、小泉純一郎氏が郵政民営化を実現するなど、いずれも歴史的な業績を残している。

 しかし、安倍首相は2度の消費税増税以外にこれといった政治的な業績が見当たらない。安倍首相にとっては、通算在職日数歴代1位にふさわしい政治家としての歴史的な業績を「憲法改正」に求めていたわけだ。

 だが、その憲法改正は「国民投票法改正案」がこれまで4回の国会に提出されているが、野党の強い抵抗に遭い、まったく進展していない。歴史的な業績となりそうな「北方領土返還」も「北朝鮮拉致問題の解決」も一向に解決の糸口さえ見えない状況だ。唯一実現可能だったのが「2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催」だったが、その夢は新型コロナウイルスが見事に打ち砕いてしまった。

 安倍首相が新型コロナウイルスの感染拡大対策で出遅れた要因のひとつとして、東京オリンピックの延期が挙げられる。

「東京オリンピック延期の判断が、何故あれだけ遅れたのか。結局、1年の延期となり2021年7月の開催となったのは、安倍首相の任期(2021年9月末)までに開催できるからだ」(永田町関係者)

 しかし、明らかに安倍首相は状況を見誤った。新型コロナウイルスの猛威を“軽視”し甘く見ていた。今や、2021年の東京オリンピック開催が危ぶまれるほど、新型コロナウイルスは世界中で猛威を振るっている。

 加えて、衆議院の任期満了が政治の混迷に拍車を掛けている。2021年9月末の安倍首相に任期後の10月21日に衆議院議員の任期満了を迎える。自民党総裁選、衆議院選が控えているのだ。

 安倍首相とすれば、東京オリンピックの成功を“花道”に任期前に衆議院解散に打って出て、余勢をかって選挙で自民党を勝利に導くというシナリオを考えていたに違いない。

 だが、現在の安倍政権における新型コロナウイルス対策に対する国民の評価では、衆議院選で自民党の勝利は覚束ないだろう。

 衆議院選で憲法改正の発議に必要な3分の2議席を失う可能性すら現実味を帯びている。そこで、「“切り札”として残したのが、“消費税減税”なのではないか」(同)との見方が出ているようだ。

 だが、新型コロナウイルスの経済や国民生活に与えるダメージが、消費税減税程度で立ち直り、安倍首相の支持率が上昇するとは思えない。「選挙が近づけば、議員は自分の再選以外に興味はなくなる。安倍政権は時間が経過すればするほど、求心力が低下してレームダック状態になる」(同)という。

 いま安倍政権にとっては、支持率を上げ、求心力を保つために最も有効な政策は新型コロナウイルス対策で勝利を収めること以外にはない。政治生命を賭して、新型コロナウイルス対策にあたり、国民が評価するような対策を実行できれば、通算在職日数歴代1位の歴史的な業績となるかも知れない。

鷲尾香一(わしお・こういち)

鷲尾香一(わしお・こういち)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」ほかで執筆中。

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Twitter:@tohrusuzuki

最終更新:2020/05/03 12:12

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