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「モラハラのトリセツ」第12回

元モラハラ加害者の僕が、再びモラハラ問題を起こした話(後編)

「できていない」自分を妻に投影していた

 その後、僕は、新しく仕入れた知識やノウハウを元に、すぐに行動を起こそうとしていましたが、時間的・体力的な余裕がどうしても捻出できません。2歳の子どもがいる中で、自分だけの時間を増やすのは簡単ではありません。妻の負担を増やしてしまうことに対する負い目もありました。

「やりたいこと=理想」と「できていない=現実」の不一致は、時に心を消耗させ、自己肯定感を低下させてしまいます。そうなると「できていない」自分を認める際の心のダメージから自分を守るために、周りの人間に「できていない」ことを投影してしまうケースがあります。

 今回の場合、投影の先が妻だったということです。「美顔器をプレゼントしたのに、ずっと開封していない妻」「スマホの性能が落ちたと言うので、それより性能がいい自分のお下がりを渡しても、すぐに使おうとしない妻」に、「できるはずのことをしない・できない」という共通の問題をすべて相手に転嫁してぶつけてしまう心の働きが存在していたのです。

 確かにそう考えると、納得のいくカラクリであるように思えました。それだけでなく「交流会の著名な先生」から「価値観の押し付け」をされた僕が、短期的に連鎖を起こしたと理解できます。だからといって、交流会の先生が全面的に悪い……ということにはなりません。パワーコントロールを受けても、それに気づかなかった自分に問題があります。今回の妻のように「相手の問題だし、自分は悪くない」とはなれませんでした。

 ではなぜ、本来気づけたであろう事象に気づけなかったか。そこには、さらに別の要因がありました。

 交流会のさらに数カ月前、僕はひょんなことから突然、いくつかのテレビ番組に出演する機会があり、瞬間的に注目を浴びてしまいました。

 そこでほんの一時的にではありますが、僕の名前と肩書に謎の箔が付いてしまい、その結果、僕は変に格好をつけるようになってしまったように思います。外で自分の弱さやダメさを出せなくなってしまったのです。

 誰に求められたわけでもないのに「そこそこ立派そうな人」を演じようとして、その結果、本当の自分を出せる場所が家庭内だけになってしまう。言い換えると、家族への依存度が、それだけ大きくなってしまったということ。依存先を絞ってしまうと、それだけで依存先の負担を大きくしてしまいます。

 僕がずっと通っている、脱暴力のためのグループワークでも、「モラハラで一度離婚を経験したが立ち直った」というロールモデルにとらわれてしまっていたように思います。グループワークの仲間がそんな役割を押し付けてこないというのは、よく考えればわかるはずなのですが、その頃の自分は残念ながら、冷静ではなかったのだと思います。

 モラハラから立ち直ったはずの自分が、その支援を広めるために無理をして、モラハラを再発させる――。まさにミイラ取りがミイラになるような話です。

 もちろん、一時的に注目されたこと自体はいい経験であり、「支援の存在を広める」目的においてはありがたい出来事でした。そもそもこの出来事がなければ、僕は今ここで記事を書いて伝えることもできなかったでしょう。

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