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「モラハラのトリセツ」第12回

元モラハラ加害者の僕が、再びモラハラ問題を起こした話(後編)

加害性は誰にでもあって、問題はひもといていける

 これらの経験も、おおよそひもとけた今では、DVやモラハラの当事者……特に加害者としてつながってこられる方にとっては、その方自身の問題をひもといていくための一助となっています。加害性は誰にでもあって、それが発露するトリガーがそろってしまえば問題は起きてしまいます。問題が起きてしまった時にも、丁寧に探っていけば、問題はひもといていける。このことは、当事者の回復への希望になり得ます。

 この一件で、僕自身も同じわだちを踏まないように、そうなる前に好ましくない状況を避ける、またはこじらせないためのスキルを再確認できたと感じています。妻・子どもとの関係も、今は基本的には良好です。小さな問題が起きかけても、大きくなる前に対処することを、今まで以上に意識するようになりました。

 今回お伝えした僕自身の例に関しても、DVやモラハラの問題が起きるトリガーとなる要素はひとつではなく、さまざまな要素が絡み合って構成されています。社会に生きる一人ひとりの価値観・状況・巡り合わせ……これらをひもといていくのは簡単ではありませんし、これは時に、いわゆる「加害者」の擁護であり、「被害者」とされる当事者の軽視と受け取られてしまうケースもあるでしょう。それでも、根気よく問題を解きほぐしていくことが重要である……と、僕は信じています。

 さて、以前僕が関わった共著に『DVは  なおる』(ジャパンマシニスト社)というタイトルの本がありますが、DVもモラハラも「治る」ものではないと、僕は個人的に考えるようになりました。このあたりは「治る」の定義にもよると思うのですが、少なくとも「完治」はしないものだと考えています。だからこそ、タイトルは平仮名で「なおる」と記されているのでしょう。

 おそらく、それは虫歯と似ているのではないかと思っています。例えば3歳までに虫歯菌に感染させなければ一生虫歯に悩まされずに済む、ということを信じて世の親御さんたちの一部は、神経質なまでの排除を試みますが、当然、100%完全に防げるものではありません。それよりも、日頃のケアが重要であり、仮に感染させてしまったとしても、定期検診で早めに虫歯を発見し、治療できればよいのではないかと思います。

 DVやモラハラの問題を、起こさないに越したことはありません。予防できるならそうしたい。それは間違いないでしょう。ですが、起こったときの被害をどう軽くするかも重要ではないでしょうか?  そのためには、ケアの方法や、起きてしまった時の回復事例を知る必要があります。これまでの連載で書いてきたことが、そのための一助となれば幸いです。

中村カズノリ(なかむら・かずのり)

1980年生まれ。WEB系開発エンジニアの傍ら、メンズカウンセリングを学び、モラハラ加害者としての経験をもとに、支援を行っている。

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Twitter:@nkmr_kznr

なかむらかずのり

最終更新:2020/06/14 15:00
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