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VODで観たい映画レビュー「劇場と配信のあいだ」

アマプラで観られる鬼作! 『ランボー』なインド映画『タイガー・バレット』からほとばしるaiko的「好き」の極み

文=加藤よしき(かとう・よしき)

サスペンス映画なのに強すぎてサスペンスにならない

アマプラで観られる鬼作! 『ランボー』なインド映画『タイガー・バレット』からほとばしるaiko的「好き」の極みの画像3
ボリウッドリメイク版『ランボー』にも抜擢されたナイスガイ・タイガー(Getty Imagesより)

 そんな最強の男が主人公なので、サスペンス部分がサスペンスにならない(だって何が起きても負ける気がしないから……)。しかし面白くないかというと、そこはさすがインド映画、テンポの良さと派手なダンスシーンで退屈はさせない。そして残り30分くらいになったところで、作り手の「好き!」が爆発し、映画は突然の転調を見せるのだった。『ランボー』(1982年)と『コマンドー』(1985年)、数々の香港格闘アクションへの強烈な愛が爆発し……もっと率直に書くと、最後の30分で映画が『ランボー』と『コマンドー』になるのだ。

 サスペンスから『ランボー』『コマンドー』って、転調しすぎでは? と思うかもしれないが、本当にそうなるのである。

 なんだかんだあった末、悪の大ボスがジャングルの奥地に私兵集団と秘密基地を構えていると判明。キレたシンは殴り込みを決意。するとシンの上官が、彼を追う警察官たちに「シンは強いぞ」「森の中でアイツは最強だ」と警告する、どう見ても『ランボー』で見たシーンが。

 さらにシンがナイフや銃を次々と体に装着し、最後は顔に黒いペイントをする『コマンドー』の完コピまで。この2つを同時にやられては、「あんたも好きねぇ」としか言いようがない。そして1対100(推定)の大乱闘に突撃するのだが、ここで再び「好き!」が爆裂。アクション映画では銃の弾が尽きないパターンが多いが、本作は主演のタイガー・シュロフは常軌を逸した身体能力を存分に見せるためか、普通とは逆パターンですぐに弾が切れる。そして「倒れた敵にシャツを引っ張られた」という必然性のある形で半裸になるや、重力無視のアクロバットなキックが戦場で炸裂。次々と武装兵士たちを蹴り殺していく。

 シンの圧倒的な強さに、思わず悪の手下も「やつは無敵です」と、身も蓋もない報告をボスに飛ばすのであった。30分前の映画と同じ作品とは思えないが、こうなるのは当然だ 。『ランボー』と『コマンドー』を混ぜたなら、それはもうどんな映画でも『ランボー』と『コマンドー』である。京都の老舗高級料亭の懐石料理でも、最後にハンバーガーとバドワイザーが出てきたらアメリカ料理になるのだ。「さっきまでのサスペンスはなんだったんだ?」という疑問や、「そもそもリメイクとして大丈夫なんですかね?」「この映画を観たときの、原作のキャストやスタッフはどんな気分だったんだろう?」といった製作の舞台裏でのサスペンスも感じるが、そこは考えても仕方がない。

 ともかく本作は非常にいびつな映画である。サスペンス映画だが、サスペンス映画的なハラハラやドキドキ、シナリオ的な驚きがあるかと訊かれたら、これは微妙なところだ。実際、母国でも興行収入は良好だったものの、評価はそこまで高くはなかった。しかし、作り手の『ランボー』『コマンドー』への愛は間違いない。だって作品の破綻すら恐れず、『ランボー』と『コマンドー』をやったのだから。

 今ここにaikoがいたら「こんなに好きなんです。仕方ないんです」と歌うだろう。そして、この狂った愛が創り上げたアクションシーンのおかげか、こうして日本でも観賞することができるのだ。日本に入ってこないインド映画は山ほどあるし、タイガー・シュロフの映画でも日本でソフト化されていない作品がほとんどで……あっ、言い忘れましたが、『タイガー・バレット』は『Baaghi』(2016年)の続編です。ですが、前作を見てなくても特に問題なしです 。

 ちなみにタイガー・シュロフさんは 、インドで大ヒットした主演作『WAR ウォー!!』(2019年)が、7月17日に日本でミニシアター系劇場で公開される予定だ。まだまだ日本全国のブレイクは遠いかもしれないが、未公開→ソフト化のみ→劇場公開と、彼の主演作は、確実にステップ・アップしてきている。さらにタイガーは『ランボー』の公式リメイク作に主演すると発表、ほかならぬスタローン本人から「頑張れタイガー、戦い続けろ」と応援コメントをもらうなど、波に乗ってきている。

「好き!」は人生を突き動かす原動力になり、多少のアラも「好き!」で乗り切ることができるのだ。時には「好き!」で後先を考えずに突っ走る必要もあるのだろう。もしここにaikoとタイガーがいたなら、口をそろえて「一度や二度は転んでみれば?」と言うだろう。やはりaikoは詩人であり、「好き!」という気持ちは厄介だが大切なのだ。

▽配信だと、ここで観られますよ!

アマゾンprime videoで400円~

アマプラで観られる鬼作! 『ランボー』なインド映画『タイガー・バレット』からほとばしるaiko的「好き」の極みの画像4

・YouTubeムービーで400円

加藤よしき(かとう・よしき)

加藤よしき(かとう・よしき)

ライター。1986年生まれ。「Real sound」「tayorini」などで執筆。『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』(洋泉社)に寄稿。

Twitter:@DAITOTETSUGEN

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最終更新:2021/02/19 15:51
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