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GoToトラベルは結局五輪のため? 批判殺到でもゴリ押し続ける安倍首相の“想い”

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安倍首相。

 GoToトラベルキャンペーンに対する批判が高まり、一方では「帰省の自粛」を求める地方自治体が増えるなど、政策の“チグハグさ”が目立つ安倍晋三政権。それでも、安倍首相にはGoToトラベルキャンペーンにかける“強い想い”があるようだ。

 日本国内における新型コロナウイルス感染者数5万人が目前に迫り、メディア各社の世論調査では、安倍政権の内閣支持率は第2次安倍政権の発足以来、最低となっている。特に新型コロナウイルス対策に対しては「評価しない」が過去最高となるとともに、GoToトラベルキャンペーンに対しても「評価しない」「適切ではなかった」が圧倒的多数を占めている。

 8月6日、通常国会閉会翌日の6月18日を最後に行っていなかった記者会見を49日ぶりに平和記念式典で訪問した広島市で行った安倍首相は、GoToトラベルキャンペーンについて、「ウィズ・コロナの時代の安全で安心な新しい旅のスタイルを普及・定着させていきたい」と継続する意思を表明した。

 確かに、新型コロナウイルスの感染拡大でいち早く影響が現れ、もっともダメージが大きかったのは、観光業や飲食サービス業だ。その上、宿泊・飲食サービス業は非正規雇用の比率が76.5%と極めて高く、全国規模の支援策が必要だ。

 だが、安倍首相が内閣支持率を下げても、GoToトラベルキャンペーンがどれだけ不評を買っても、地方自治体から反発を受け「帰省自粛の要請」が出るなど、国と地方が“不協和音”を奏でても、そして、キャンペーンの対象から東京を除外してまでもGoToトラベルキャンペーンを強行に実施するのには、「別の想いがある」(永田町関係者)という。それは、2021年の東京オリンピック・パラリンピック開催への“下準備”だ。

 5月3日に拙稿「安倍首相はなぜ『五輪延期』踏み切れずコロナ対策が遅れたのか? 在任9年で“ほぼ実績なし”の現実」で、すでに安倍首相の通算在職日数は日本の首相として、歴代1位になっており、これまでの通算在職日数が上位の首相は、いずれも歴史的な業績を残しているが、安倍首相にはそれがない。

 安倍首相が歴史的な業績として狙っていたのは「憲法改正」だったが、それは遅々として進まず、「北方領土返還」も「北朝鮮拉致問題の解決」も一向に解決の糸口さえ見えない状況だ。残された唯一の業績は「東京オリンピックの開催」しかなくなっていると指摘した。

 そして、安倍首相が今、“頑な”にGoToトラベルキャンペーンの実施に拘る点に関して、永田町関係者は、「旅行を再開させることにより、新型コロナウイルス感染拡大の影響が懸念される状況でも、東京オリンピック開催を可能とするための下地作りを狙ったものではないかと見ている」という。

 確かに、GoToトラベルキャンペーンに世論の目が向いているため、ほとんど知られていないが、外務省はインバウンドの再開のため着々と準備を進めている。

 外務省のホームページには6月18日には「国際的な人の往来再開に向けた段階的措置」が発表され、7月22日には「国際的な人の往来の再開等」が発表されている。これにより、大使館関係者やビジネス上必要な人材を対象者として海外渡航が始めっている。

 さらに、7月22日には、8月5日から日本の在留資格を持つ駐在員や留学生らの再入国を開始させた。今後、周辺各国と往来の再開に向けて本格的な協議を開始する方針だ。そこには、徐々にではあるが海外との往来を再開していくことで、インバウンドの再開に結び付けていきたいという意向が透けて見える。

 何よりもインバウンドの再開こそが、「東京オリンピックの開催を可能とする必須条件となる」からだ。つまり、新型コロナウイルスと東京オリンピックの開催が共存できる状況を作り上げることが何よりも重要となる。

 だが、新型コロナウイルスは世界的な感染拡大が続いており、未だに治療薬もワクチンもない。その上、新型コロナウイルスが世界各地で、様々な性質に変容しているとの研究結果も出ている。

 東京オリンピックを開催すれば、世界中から様々なタイプの新型コロナウイルスが入ってくる可能性がある。果たして、現在の国内の医療体制でこうした事態に対処できるのだろうか。

 安倍首相の自民党総裁任期は、2021年9月。自民党党則を改正して、安倍首相が続投する可能性もあるが、自民党総裁=首相として歴史的な業績を起こすためには、東京オリンピックの開催は、任期中の最後のチャンスだ。果たして、安倍首相は東京オリンピックの開催に“漕ぎ付ける”ことができるのだろうか。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2020/08/14 15:00
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