スパイク・リーをやっと世界が認めた!『ザ・ファイブ・ブラッズ』でみせたセンスとメッセージ性の融合

文=伊丹タン(いたみ・たん)

伊丹 PTSDの話でいうと、今回って回想シーンがすごく特徴的だったじゃないですか。あれを映画の定石として見た時に、フラッシュバックするんだったら、普通は登場人物の当時の若い姿を映すわけですよ。でも現在軸の年齢で演じさせてたでしょ。CGを使えなかったり、予算とか物理的な制約もあったかもしれませんけど。でもPTSDでフラッシュバックしてると考えると、今の姿のままでやるというのは芯食ってるなって思って。

大室 夢の中に出てくる昔の風景もそうだもんね。その当時、死んでしまった人でなければ今の顔だったりするもんね。

伊丹 本当にセンスがある人ですよね。もちろんこれまでもリスペクトはされてたんだけど、本当に最近まで大きな賞はもらえてなかった。実績として中途半端ではあったから、監督としての承認欲求はすごかったと思いますよ。

大室 『ザ・ファイブ・ブラッズ』も、批評家がこぞって激賞してるじゃん。今回の作風というか、大ネタ使いもする感じというか、いいバランスでずっと作っていったら無双だよね。

伊丹 やっと世界とチューニングが合った感じですよね。賞をとった『ブラック・クランズマン』も結局、すごい大ネタ使いですからね。いわゆるB級プログラムピクチャーの大きな骨組みプロットを惜しげもなく使ってるから。

大室 その目線でいうと、今回はNetflixで公開するっていうのも良かったのかもね。映画を神聖なものとしてすごくリスペクトしてる人だし、その歴史を背負ってきてるから。映画っていうものに対して、だからこそ映画じゃないフォーマットだったことで肩の力が抜けたのかな。

伊丹 間違いなく一つひとつ凄まじく真摯に、愚直に作ってますからね。興行収入の呪縛から逃れられるっていうのも、作り手からすると大きいんですよ。商業映画で興行収入をしっかりとってリクープしないといけない作品の制作って、ファイナルカットの権利をもらえる監督って少ないんですよね。スタジオ側とプロデューサーに権利があって、これじゃ売れないとか、相当なことを言われるんですよ。スパイク・リーはリスペクトはされてるけど、興行収入は狙いにくい作品になるからかなり戦い続けてきたのではないか。そこをのびのびやれた結果、成熟したスパイク・リーの良い部分が融合してわかりやすいエンタメになったという、ある種の皮肉な話でもあります。

大室 Netflixが大ネタ使いを求めてるところもあるかもしれないね。オシャレなVシネというか。

伊丹 Netflixって監督などのクリエイターが持ってる根っこの部分の、一番味付けの濃いやつをくれっていう傾向もあると思うんですよね。もう他の商業映画じゃできない濃いやつ。

大室 スパイク・リーはもともとテーマは濃かったけど、オシャレ男子の部分が邪魔して濃くできないっていう部分もあったからね。

伊丹 今回の資料映像だって、エグいシーンばっかり使ってたわけですよね。死体損壊もそうですよね。本編内の地雷踏んだとこの描写とかも。スパイク・リーはこれまでもああいう、これが現実だってことを写実的にやりたかったけど出来なかったのかもしれないですね。

大室 スパイク・リーは現実を見せたくて、それがNetflix側からしたら他ではできない濃さ、強度だってなったんだろうね。そこらへんもうまく合ったんだろうね。

『ザ・ファイブ・ブラッズ』(2020)監督 スパイク・リー
Netflixで独占公開されたスパイク・リーの最新監督作。ベトナム戦争からほぼ半世紀。共に戦った4人の黒人退役軍人が、隊長の亡骸と埋められた金塊を探し出すために戦場へと舞い戻る。

小川でやんす(おがわ・でやんす)

小川でやんす(おがわ・でやんす)

小川賢治。1989年生まれ。放送作家、映像ディレクター、ライター。大学を卒業しフリーで活動、2017年「小川でやんす」に改名。

大室正志(おおむろ・まさし)

1978年生まれ。現在、産業医として日系大手企業、外資系企業、ベンチャー企業、独立行政法人など約30社を担当。

Twitter:@masashiomuro

伊丹タン(いたみ・たん)

1979年生まれ。インディペンデント映画の制作に携わり、現在はフリーランスでテレビドラマ、映画、舞台などのプロデュースをしている。

最終更新:2020/09/12 11:00
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