スパイク・リーをやっと世界が認めた!『ザ・ファイブ・ブラッズ』でみせたセンスとメッセージ性の融合

文=伊丹タン(いたみ・たん)

スパイク・リー(写真/GettyImageより)

 サブカル好き産業医の大室正志とB級映画プロデューサーである伊丹タンが、毎回ひとつのVOD作品を選んで、それぞれの立場から根掘り葉掘り作品を掘り尽くす本連載。

 前編では最新作を語る前提として「日本でのスパイク・リー論」で白熱したが、今回は『ザ・ファイブ・ブラッズ』をテキストにしつつ、いま最盛期を迎えているというスパイク・リーの、制作的なアプローチについても見ていこう。

前編はこちら「90年代、スパイク・リーは『マルコムX』のキャップだった! 挫折した人が『ザ・ファイブ・ブラッズ』を見るべきわけ

実は“無冠”だったスパイク・リーが、ようやく最盛期

伊丹 スパイク・リーってすごい不遇の監督でもあるんですよね。コンスタントに作品を出してるけど、実はメガヒット級の興行収入を生み出す作品みたいなのは、これまでなかったんですよ。

大室 確かにね。

伊丹 その上でさらに、本当はずっと賞を欲しがっていた人だと思います。すごいインテリでテーマ性をたくさん盛り込むし、映画もたくさん勉強して一生懸命過去の教養も織り込んでくる。それだけにさまざまな引用が散りばめられてるので、見る側のレベルによって全然見方が変わるんですよね。それが今、カンヌでグランプリを取って、アカデミー賞にノミネートされて脚色賞も獲った『ブラック・クランズマン』(18)で、初めてキャリアの絶頂期を迎えている。

 さらに今回の『ザ・ファイブ・ブラッズ』もエンターテインメントとして面白くて、もともと彼が持ってた社会性とエンタメ性がいい形で融合したパターンだと思うんですよ。なんと言ってもプロットが強い。黒人のベトナム帰還兵が仲間の遺骨と金塊を探しに行くっていう、中2でも考えそうな話なんだけど、グイグイ引き込まれます。あと、ベトナム戦争っていうアメリカで常に描かれ続けてきたものを今、あえて掘り起こすのは、たぶん黒人だけじゃなくて、アメリカ人全体の大きな記憶としてパイが大きい。そもそも本当は“白人”の帰還兵でやろうとしてたプロットを提案されたスパイク・リーが黒人に変えて、自分がずっとやってきたテーマに引き寄せていったんですけど。

大室 ベトナム戦争といえば、フランシス・F・コッポラの『地獄の黙示録』(79)にも触れざるを得ないんだけど、スパイク・リーと圧倒的に違うのは、“東洋人を心や話の通じる相手じゃなくて、風景として描いていた”と、いわれてるよね。でもスパイク・リーはベトナム人だろうと、白人至上主義で単眼的に見るんじゃなくて、そっちにもそっちの事情があるって複眼的に描写しているんだよね。今回の映画は白人も出てきたし、現地のベトナム人も全員“顔”が見えてきたじゃないかな。

伊丹 きっと「俺は正しい歴史認識を持っている」っていうことに、相当なプライドがあると思います。今回、フランス人として出てるジャン・レノの使い方もそう。アメリカ人がいて、ベトコンもいて、フランス人もいてっていう、歴史的な関係性をちゃんと踏まえたキャラ配置にしてるから、あとからこのキャラ造形は甘いとか、フランス人もこんなことやってたじゃないかとか、絶対にツッコまれないように作ってますよ。

大室 ジャン・レノも半グレ組織の人みたいな感じだったけど、ああやってフランス人が暗躍してたっていうことも、本当にあったんだろうね。[button_more text=’司馬史観ならぬのスパイク・リー史観を通せるワケ’


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