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菅首相、消費増税はまったなし!? 安倍元首相と“同じ轍を踏む”方針に疑問

 一方、熊谷氏は新型コロナの影響により財政出動が膨らんでいることについて、「当面は緊急事態なので、ある程度、歳出が増えるのはしかたないが、財政の規律を守り、むだはしないという精神を貫くことが非常に重要だ」と述べており、基本的には財政出動には慎重な姿勢を示している。

 だが、自著の中で「政治家の質が低下しているのだとすれば、それは日本人の『民度』の低下を映す鏡に過ぎない。象徴的な事例は、国民の間に蔓延する『消費税引き上げ』に対する過剰な拒絶反応である。『民度』を高めること、つまり国民一人一人が『見識』を持たなければ、日本の財政破綻は回避できない」と述べている。

 新型コロナ禍の真っ最中の8月5日、政府税制調査会(首相の諮問機関)で熊谷氏は新型コロナという天災のため、「責任をなかなか追及することができないので同調圧力が強く、野放図に歳出の拡大圧力、財政の悪化が続くリスクがあるから、財源の調達の機能、とくに消費増税を中核に据えた骨太の議論が必要」との発言している。

 9月10日、自民党総裁選の最中に菅首相は、「これだけの少子高齢化社会、どんなに私どもが頑張っても人口減少は避けることはできない。行政改革を徹底して行った上で、消費税は引き上げざるを得ない」と発言した。翌日、「将来的な話として答えた」と付け加えることで批判をかわしたが、菅首相の頭の中には明らかに“消費増税”がある。

 高橋氏は「積極財政で増税反対」、熊谷氏は「財政出動に慎重で消費増税推進」と対立した構図に見えるがそこは政治家、“自分に都合の良い考えだけ”を採用する。つまり、「積極的な財政出動を行い、そのツケは消費増税で返す」という考えだ。

 もちろん、この新型コロナ禍を乗り切るために“本当に必要な”財政出動を否定するものではない。だが、効果も見込めない政策や途中でどこかに消えてしまう予算は絶対に無くさなくてはならない。

 安倍政策の継承を掲げて首相に就任した菅首相は、人材の登用も安倍人脈やお友達人事を踏襲し、積極財政と消費増税も継承するのだろうか。安倍前首相の功績と言えば、2度の消費税率引き上げぐらいだ。菅首相も“同じ轍を踏む”つもりなのか。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2020/10/16 19:14
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