日刊サイゾー トップ > 連載・コラム > パンドラ映画館  > 酒井法子、幻の主演作が公開
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.620

お蔵入りしていた酒井法子の復帰作『空蝉の森』帰ってきた女は、中身が異なる赤の他人だった!?

文=長野辰次(ながの・たつじ)

帰ってきた妻に対する恐怖心、猜疑心

お蔵入りしていた酒井法子の復帰作『空蝉の森』帰ってきた女は、中身が異なる赤の他人だった!?の画像2
記憶を持たない結子(酒井法子)は、山井(西岡徳馬)のカウンセリングを受ける。

 血の繋がりのある親子関係とは異なり、夫婦は直接的な利害関係によって結ばれている一種のパートナーシップだ。『ジャック・サマースビー』の妻(ジョディ・フォスター)は、かつては暴力的だった夫(リチャード・ギア)が別人のように優しくなったことを喜んだ。『天国と地獄の美女』の妻(叶和貴子)は、締まり屋だった夫(伊東四朗)が全財産を使ってこの世の楽園「パノラマ島」の建設を始めたことに興味を抱く。夫婦はもともとは赤の他人同士なので、中身が変わっても彼女たちはさほど問題にしない。むしろ、夫が変わったことを好意的に受け止める。新しい夫が与える刺激が、よほど心地よいのだろう。

 だが夫である昭彦は、帰ってきた結子が妻であることを頑なに認めようとしない。結子のことを気持ち悪がり、別の寝室で寝るようになる。結子が作った手料理も、「毒が入っているかもしれない」と口にしようとしない。帰ってきた妻に対する恐怖心、猜疑心で昭彦の心の中は占められている。映画やTVドラマの中の妻たちが夫の変化を受け入れるのに対し、夫は妻が変化することを恐れるものなのかもしれない。

 ようやく自宅に帰ってきたものの、結子には居場所がない。それでも、この家にしがみつこうとする。他に行き場所がないからだ。所在なさげな薄幸系ヒロインを、芸能界に復帰して間もない酒井法子が当時の状況そのままに演じている。アイドル時代とは違った、やつれた姿は影のある美しさを感じさせる。昭彦はなぜ手を出さないのかと不思議に思うほどの妖艶さが漂う。

 本作を撮ったのは、壇蜜主演の官能映画『私の奴隷になりなさい』(12)を大ヒットさせた亀井亨監督。ホラー小説界の鬼才・平山夢明の短編小説を、『無垢の祈り』(15)と して自主映画化したことでも知られる。『私の奴隷になりなさい』は女王さまと奴隷というSM関係を結ぶことで、ようやく他者と繋がることができる現代人の孤独さを浮き彫りにしていた。『無垢の祈り』は親から虐待されている幼女が、街で噂になっている連続殺人鬼に救済を求める哀しい物語だった。

 亀井監督作品は“人間に対する不信感”がいつもテーマになっている。『ねこタクシー』(10)などの動物映画も数多く撮っているが、それは動物のほうが人間よりも裏切ることが少ないという理由からだ。

123

お蔵入りしていた酒井法子の復帰作『空蝉の森』帰ってきた女は、中身が異なる赤の他人だった!?のページです。日刊サイゾー芸能最新情報のほか、ジャニーズ/AKB48/アイドル/タレント/お笑い芸人のゴシップや芸能界の裏話・噂をお届けします。その他スポーツニュース、サブカルチャーネタ、連載コラムドラマレビューインタビュー中韓など社会系の話題も充実。芸能人のニュースまとめなら日刊サイゾーへ!

ページ上部へ戻る

人気連載すべて見る

元木昌彦の『週刊誌スクープ大賞』

「週刊現代」「FRIDAY」の編集長を歴任した"伝説の編集者"元木昌彦による週刊誌レビュー

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、かく語りき

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士の最新情報をお届け! 嫁・麗子も時々登場。

テレビウォッチャー・飲用てれびの『テレビ日記』

テレビの気になる発言から、世相を斬る!

じゃまおくんのWEB漫クエスト

マンガレビューブログ管理人じゃまおくんが、インターネットに埋もれる一押しマンガを発掘!

腹筋王子カツオ『サイゾー筋トレ部』

“腹筋インストラクター”腹筋王子カツオさんが、自宅でも簡単にできるエクササイズを紹介!

イチオシ企画

【PR】DYM・水谷佑毅社長の野望とは?

医師免許を持つ、ベンチャー経営者の異色の半生!
写真
特集

多様化する日本のHIPHOP最前線!

さまざまなアーティストが生まれ出るHIPHOPの最前線はこれだ!
写真
人気連載

印米中、常識破りのジャンクかた焼きそば

 シュプリームのコレクションに楽曲を提供し、...…
写真
インタビュー

蝶野正洋が教える自然災害×コロナ回避法

 プロレス界を代表する悪役(ヒール)として活躍し、現在はアパレルブランド「ARIST...
写真