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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.620

お蔵入りしていた酒井法子の復帰作『空蝉の森』帰ってきた女は、中身が異なる赤の他人だった!?

文=長野辰次(ながの・たつじ)

古来より、空っぽさを抱えて生きてきた人間たち

お蔵入りしていた酒井法子の復帰作『空蝉の森』帰ってきた女は、中身が異なる赤の他人だった!?の画像3
退職を控えた刑事役で柄本明が出演。角替和枝も出演しており、最後の夫婦共演作となった。

 本作のタイトルにある空蝉(うつせみ)とは、文字通りセミの抜け殻のことであり、この世を生きている人間のことも指している。『万葉集』の時代を生きた歌人たちの目には、地上に出て8日目には死ぬセミと同じくらい人間もはかない存在に映ったらしい。人間のはかなさは、万葉の時代も現代もさほど変わらない。でも、人間が空蝉のように空っぽな存在なら、どこへ向かえばいいのだろうか。肝心の中身は、どこへ消えてしまったのだろうか。

 平安時代に書かれた長編小説『源氏物語』には、「空蝉」と呼ばれる女性キャラクターが登場する。光源氏に求められた空蝉は、脱ぎ捨てた衣類だけを残して姿を消してしまう。空蝉は『源氏物語』の作者・紫式部自身だとも言われている。紫式部は『源氏物語』を書くことによって、自分の空虚さを埋めようとした。酒井法子は結子役を懸命に演じることで、やはり自分の空虚さを埋めようとしている。

 小説を書く才能もなく、俳優でもない私たちは、せめて誰かを愛することぐらいしか自分の空虚さを埋める手段を持たない。例え、誰かを愛するという行為がそう長く続くものではないと分かっていても、誰かに愛情を注がずにはいられない。そうでもしないと、自分の空っぽさに耐えきれなくなってしまうからだ。

 どうやら、私たちが暮らす街そのものが、「空蝉の森」であるらしい。セミたちの激しい鳴き声を消し去るような夕立が降り、この物語は幕を下ろすことになる。

 

お蔵入りしていた酒井法子の復帰作『空蝉の森』帰ってきた女は、中身が異なる赤の他人だった!?の画像4『空蝉の森』
監督/亀井亨 脚本/亀井亨、相原かさね
出演/酒井法子、斎藤歩、金山一彦、池田努、長澤奈央、角替和枝、西岡徳馬、柄本明
配給/NBI 2月5日(金)よりアップリンク 渋谷ほか全国順次ロードショー
(c)「空蝉の森」製作委員会 NBI
https://utsuseminomori.com

長野辰次(ながの・たつじ)

長野辰次(ながの・たつじ)

フリーライター。著書に『バックステージヒーローズ』『パンドラ映画館 美女と楽園』など。共著に『世界のカルト監督列伝』『仰天カルト・ムービー100 PART2』ほか。

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最終更新:2021/01/29 19:38
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