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【現代ヤクザの基礎知識】

ヤクザに下される処分「破門」「絶縁」「除籍」の違いとは? 山口組分裂問題との関係も

「除籍」処分がもつ2つのニュアンス

 一方、「絶縁」は、組織からクビを切られることは同じだが、こちらはヤクザ渡世に永遠に復縁できないことを意味する。いうならば、ヤクザ社会からの完全な追放、死刑宣告を意味している。どれだけのことをすれば絶縁となるのか。それは社会に与えた影響や謀叛などの組織に対する不義理の度合いによるのだが、例えば、警察などに組織に関する秘密事項を悪意をもって密告したりすれば、絶縁処分の対象として協議されるのだ。

 そして除籍だが、これには2通りの意味があるといっていいだろう。ひとつは、本人の意思も踏まえて、円満にヤクザ社会から足を洗うことを認められたケースで、「引退」と表現するには年齢的に若い場合だ。例外はあるが、一般社会の定年に近い60歳前後に到達していない限り、“円満退社”的な辞め方だとしても、関係先には除籍という通知が出される。もうひとつのケースは、本来ならば破門と同様の処分を受けるところを、それまでの組織に対する貢献度などから、除籍とされるケース。実態はクビだが、情けとして、除籍という緩い表現に落ち着かせてやろうというものだ。

 つまり、前者の除籍が実質上は引退扱いなのに対して、後者は破門に近い処分といえる。だが、どちらにしても共通していることは、一度除籍となれば、破門とは違い再び渡世へと復帰することはできないところだ。

 しかしそうした本来の処分の持つ効力が、現在では必ずしもそうなっているとはいえないだろう。なぜならば、日本最大組織の山口組の分裂劇においては、2015年に六代目山口組が絶縁、破門処分を下した親分衆によって神戸山口組が結成され、現在もヤクザ渡世に身を置き、活動を存続しているからだ。

過去に業界内で起きた破門劇

 この分裂劇以前にも、六代目山口組では、一般紙までもがその動向を取り上げた、10数名の親分衆に対する処分問題が起きている。2008年に起きた後藤組・後藤忠政組長(当時)に対する処分がきっかけだった。

 当時、六代目山口組・司忍組長は府中刑務所に収監されており、司組長の留守を守るべく、髙山清司若頭を中心にした執行部が組織運営を行なっていたのだった。その執行部の親分衆が問題としたのが、後藤元組長が開いた誕生日会を兼ねたゴルフコンペであった。

 当時、山口組の直参であった後藤元組長は病気を理由に、六代目山口組総本部で開催された定例会を欠席していた。だが、同時期に後藤元組長が芸能人を招いてゴルフコンペを行っていたことを週刊誌が報じたのだ。これを六代目山口組執行部が問題視し、後藤元組長への厳しい処分が検討されたのだが、執行部のこうした強硬姿勢に反旗を翻した親分衆らが連判状を叩きつけ、山口組全体に緊張が走ったのだ。この時には、後藤元組長が除籍という形で身を引くことで問題は解決し、大事にはならなかった。だが、のちに連判状に名を連ねた親分衆にも絶縁、破門、除籍などの処分が下され、山口組を離れることになる。

 この粛正ともいえる一斉処分では、髙山若頭の豪腕ぶりが存分に発揮され、無血で組織の世代交代をも成功させることになったのだ。だが、これに対して不満を抱く勢力が生まれたことも、のちの山口組分裂の一因になったことは否定できないだろう。

 

佐々木拓朗(ライター)

アウトロー取材経験ありの元編集者のフリーライター。自身の経験や独自の取材人脈を生かした情報発信を得意とする。

ささきたくろう

最終更新:2021/02/03 17:00
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