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鈴木健吾、マラソンで驚異の日本新! 最高の記録が出た“最悪のタイミング”

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鈴木健吾(@Kengo_Suzuki_)

 かたや2度の記録更新で2億円、かたや驚異の記録更新でも報奨金はゼロ──2月28日に行われた「びわ湖毎日マラソン」で、鈴木健吾(富士通)が2時間4分56秒の日本新記録を出したが、その“運の無さ”に周囲から同情の声があがっている。

 大阪マラソンとの統合が決まり、今年でラストとなったびわ湖毎日マラソン。今回で76回目となる日本最古のマラソン大会で、素晴らしい記録が誕生した。鈴木は、大迫傑が持つ日本記録を一気に33秒も更新し、タイムは2時間4分台に突入。一気に世界の背中が見えてきた。

「鈴木がゴールした後、多くの関係者から『コースが短いんじゃないか?』という声が出るほど凄まじい記録でした。世界記録とはまだ3分以上の差があり、世界歴代で50位にも入りませんが、鈴木より速い記録の持ち主は、マラソン界で圧倒的な強さを誇るケニア、エチオピアの選手ばかり。五輪では1つの国から最大3人の選手しか出られませんから、メダル獲得も夢ではありません」(スポーツジャーナリスト)

 鈴木のこれまでの自己ベストは2時間10分台。秒単位でタイムを削っていくのが当たり前の陸上競技で、一気に6分近く自己ベストを更新したのは驚異と呼ぶしかないが、彼はいったい何者なのか?

「鈴木は神奈川大学時代、箱根駅伝の“花の2区”で区間賞を取っていますが、神大は優勝争いに絡むチームではなかったので、扱いは地味でした。東京五輪代表の座を争うMGCでも7位と好走しましたが、五輪代表を掴んだのは大迫傑、服部勇馬、中村奨吾といった箱根のスターばかり。どちらかと言えば“日陰”を歩いてきた印象です。

 ただ、今回のびわ湖ではラスト5kmを14分23秒で走っており、これは世界トップクラスと比べてもまったく遜色ないもの。マラソン界では、後半にタイムを上げる『ネガティブスプリット』が当たり前ですが、鈴木はこれも達成しており、アフリカ勢と十分台頭に勝負できるでしょう」(同上)

 ただ気になるのは、記録を出した“ご褒美”だ。日本マラソン界では、瀬古利彦の旗振りで強化策が練られ、「1億円」という大きなニンジンがぶら下げられていたが、無計画に“散財”したことで、もう財布はすっからかんだ。

「1億円ボーナスは、2018年に設楽悠太がゲットし、その後、大迫傑が2度にわたって記録を更新して計2億円を獲得。すでに資金は枯渇しており、鈴木に報奨金は出ません。しかも東京五輪の代表はすでに決まっており、補欠まで決まっているので、東京五輪に出られる確率はゼロです」(週刊誌のスポーツ担当記者)

 1億円がもらえないだけでも猛烈に痛いが、レース自体も注目度は今ひとつだった。

「マラソン中継といえば、日曜日の昼食時にスタートするのがスタンダード。びわ湖マラソンの中継も例年視聴率は2ケタに乗りますが、今年は9時15分スタートだったので、それには遠く及びません。そういった点でも、今回の鈴木は気の毒でしたね。

 アスリートは記録や結果がすべてですが、顔を売るのも大切な作業です。名前が売れればCMで声がかかるかもしれませんし、マラソン選手は市民マラソン大会などにゲストで呼ばれるのが大きな収入源。声をかけてもらうには、名前が知られていないといけません。その点で言えば、箱根駅伝で活躍するのは一番の近道。マラソンが趣味だとアピールする芸能人も、狙いは大体“ビジネス”ですよ」(同上)

 記録は出したものの、1億円はもらえず、お茶の間にも顔は売れず……となった鈴木。タイムは最高だったが、記録を出したタイミングだけはあまり良くなかったようだ。

石井洋男(スポーツライター)

1974年生まれ、東京都出身。10年近いサラリーマン生活を経て、ライターに転身。野球、サッカー、ラグビー、相撲、陸上、水泳、ボクシング、自転車ロードレース、競馬・競輪・ボートレースなど、幅広くスポーツを愛する。趣味は登山、将棋、麻雀。

いしいひろお

最終更新:2021/03/05 14:00
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